2014 Fiscal Year Annual Research Report
ジル・ドゥルーズの哲学における学習概念の教育思想史的研究
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14J07997
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲田 祐貴 東京大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ドゥルーズ / 学び論 / 経験論 / 授業研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)教育学におけるドゥルーズ研究の整理した。教育学においては、本研究が主対象とするドゥルーズの思想は十分に紹介されているとは言い難いが、それでも最近ではいくつかの成果が現れてきている。それらの文献を蒐集し分析した。この作業は昨年度から引き続き行ってきたものである。 (2)ドゥルーズの哲学を学び概念を軸に再構成した。ドゥルーズの哲学における学び概念に注目し、その特徴について明らかにするとともに、学び概念を軸にして、ドゥルーズの主著『差異と反復』を再構成した。これにより、これまで教育学上では扱われてこなかった本書を、教育学の議論の俎上にあげることが可能になったと思われる。その成果を教育哲学会で発表した(稲田祐貴「ジル・ドゥルーズの哲学における学び概念の位置付け」口頭発表、2014年9月13日、日本女子大学)。 (3)ドゥルーズ哲学を授業研究に応用した。ドゥルーズの絵画論『感覚の論理』を読み解き、ドゥルーズが絵画を分析する観点を抽出した。その手法でもって、実際の小学校の図画工作の授業を参与観察し、分析した。その成果を、研究論文として紀要雑誌『研究室紀要』(東京大学大学院教育学研究科基礎教育学コース)に投稿した。 (4)ドゥルーズの哲学における経験概念についての比較研究を行った。ドゥルーズが述べるところの「超越論的経験」とはいかなるものか、その意義や特徴について、20世紀における経験論者(デューイとフッサール)との比較によってその一側面を明らかにした。その成果は、すでに研究論文として、学会誌『教育哲学研究』(教育哲学会)に投稿予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
着実に研究は進められている。 期待以上の研究の進展があったと判断したのは、次の理由による。すなわち、本研究の主対象であるドゥルーズの哲学についての、テクストそのものの読解や教育思想史的な定位の作業に加えて、ドゥルーズの哲学に着想を得て、実際に行われている授業を参与観察し、分析するという、応用研究にも着手できているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に基づきつつ、大きく次の二点について研究を進める。
(1)ドゥルーズとガタリが記した『アンチ・オイディプス』、『千のプラトー』の読解と教育学への導入を試みる。具体的には、彼らの資本主義批判や能力批判に注目し、そのアイデアを、教育における評価のあり方や、特別支援教育への応用を試みる。
(2)小説の授業研究を行う。ドゥルーズの一連の文学論を手掛かりにして、実際に行われている授業を参与観察する。ドゥルーズの哲学と授業を往還しながら、両者にとって新しい発見を含む観点を抽出したい。
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Research Products
(1 results)