2014 Fiscal Year Annual Research Report
熱帯-亜熱帯島嶼河川生態系における腹足類の管理・保全に関する研究
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14J08008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日髙 裕華 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | トウガタカワニナ類 / 両側回遊 / 絶滅危惧種 / 保全 / 初期発生 / 生物地理 / 分類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.信頼性の高い種分類体系の構築:出来るだけ多くの形態種、変異および産地を網羅するように選出した日本産トウガタカワニナ科貝類の約250個体について、国外からの比較標本とあわせ、分子系統解析を行った。その結果、ミトコンドリアDNAと核DNAによる系統樹は互いにほぼ整合的であること、一方で既存の殻形態による種分類とは時に不整合であることが明らかとなった。 2.両側回遊による海洋分散の検討:成熟個体の飼育ならびに成体育児嚢の内容物の観察により、初期発生様式を解明した。浮遊発生型と明らかになった7種を対象に、幼生飼育実験(海水・汽水・淡水環境での生残・成長率の比較)および、各種の国内地域個体群について、集団構造ならびに遺伝的多様性の検討を行った。その結果、これら7種は両側回遊性であり、種ごとに異なる海洋分散能力をもつことが明らかとなった。 3.繁殖生態の解明:直達発生型と明らかになった6種について、育児嚢内に胚・幼生・稚貝を保育している雌個体の割合を算出した。その結果、いずれの種も大部分が雌個体から構成されており、単為生殖を行っていることが強く示唆された。 本研究は、両側回遊性貝類において初となる、ペディベリジャー期までの幼生飼育に成功し、同科の回遊種の着底可能時期を明らかにした。また、日本産種において初めて遺伝的集団構造解析を行い、国内個体群間の交流の頻度および人為的な集団撹乱の有無を検討した。こうした知見は、熱帯・亜熱帯島嶼河川生態系における淡水産貝類相の維持・管理に重要な役割を果たすと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに奄美大島・沖縄諸島・八重山諸島にて標本採集を行い、遺伝子解析・飼育観察・性比の検討を行った。日本に生息するトウガタカワニナ類の大部分において、分類・初期発生・生物地理に関する知見が得られていることから、順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
小笠原諸島において野外調査を行う。得られた知見を総合し、国内のトウガタカワニナ類において保全が必要な種あるいは地域個体群を検討する。これまでの研究成果を取りまとめ、出版に向けて原稿を準備する。
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Research Products
(3 results)