2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J08080
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
本橋 裕美 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 源氏物語 / 斎宮 / 小柴垣草紙 / 皇女 / 女王 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、皇女や女王が王権と密接にかかわる重要な結節点である「斎宮と密通」の研究を進展することができた。平安時代の密通事件を題材にとった絵巻である『小柴垣草紙』の調査を進め、その調査をもとに、物語研究会7月例会において、口頭発表として「反復される斎宮と密通の語り ―『小柴垣草紙』が語る〈禁忌〉の恋を中心に―」(を行った。斎宮の性行為が仏教的秘事として捉えられ、「潅頂の巻」という呼称を持つに至る『小柴垣草紙』について、内容とともに絵巻そのものが天皇や后由来の品として語られていく享受のあり方を見、王権やジェンダーの観点からも論じた。この成果は、『物語研究』15号に発表予定である(未刊)。 その他の成果として、「光源氏の流離と伊勢空間―六条御息所と明石の君を中心に―」(『源氏物語煌めくことばの世界』翰林書房、2014年4月)、「源氏物語の貴族社会論―物語の世の中―」(『新時代への源氏学6』竹林舎、2014年5月)、「『夜の寝覚』における前斎宮の役割」(『狭衣物語 文の空間』翰林書房、2014年5月)、「『源氏物語』六条院における不在の女君」(『源氏物語〈読み〉の交響Ⅱ』新典社、2014年9月)、「平安後期物語から見る大津皇子の物語の展開」(『古代文学』54号、2015年3月)、 「文学空間としての斎宮サロン」(『学芸古典文学』8号、2015年3月)を発表した。 また、研究活動としてヨーロッパ日本学会(EAJS)(リュブリャナ・8月)への参加をはじめ、多くの学会に参加し、意見交換、資料収集等を行った。 平成26年度は本研究課題の第一年目にあたる。今後の研究の進展のための調査、収集を中心に、充実した活動を行うことができた。平成27年度以降の研究を深めていくために重要な成果を得られたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の深化のために、さまざまな学会・研究会に参加し、また論文としても公表することができた。また、次年度以降の課題のための情報収集、資料収集ができたため、本課題は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
「皇女・女王と王権に関する文学史的研究」の研究進展に向け、平成26年度の成果である『小柴垣草紙』の調査を履修し、更に進めていく。 また、本研究課題は、研究の方法として、「文学史」を捉えることを目指している。歴史上で起きた事件がいかに文学作品に取り入れられ、また文学作品がいかに現実世界や歴史認識に影響を与えているかを検討することで、文学史の構築を試みている。よって、中世の物語作品と歴史の往還をめぐる研究を推進していく予定である。 次年度以降、中国思想研究室という利点を生かし、中国や朝鮮半島の文献をとおして日本の語られ方を検討する方法を用いて、皇族女性と王権を明らかにするという研究目的に新たな知見を加えていきたい。
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