2015 Fiscal Year Annual Research Report
海洋漂流プラスチック摂食による、海鳥への化学物質蓄積現象の解明
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14J08120
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 厚資 東京農工大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | プラスチック摂食 / 化学物質 / 海洋汚染 |
Outline of Annual Research Achievements |
北大西洋のフルマカモメ20個体の摂食プラスチックと肝臓試料中のポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)を分析した。フルマカモメのうち5個体の肝臓からは、摂食したプラスチック中に由来すると推測されるPBDEsの蓄積が検出された。しかしながら、同じ個体の摂食していたプラスチックからはPBDEsは検出されず、プラスチック由来化学物質が移行、蓄積したのちに、そのプラスチックを排出したと考えられた。 この結果を受け、臭素系難燃剤以外も含めたプラスチック中添加剤を網羅的に調べる分析を行った。大西洋フルマカモメの摂食プラスチック計180個、太平洋聟島のコアホウドリ、クロアシアホウドリのひなの吐き戻し(巣立ち前に吐き出す塊)中のプラスチック40個について、一粒ずつ分析した。このうち2粒でPBDEsを検出、3粒で添加由来ヘキサブロモシクロドデカンを検出、1粒から添加由来とみられる未同定の物質を検出、そのほか主にポリプロピレンの試料の多くから、数種類の未同定の物質を検出した。これまで、海洋に漂流していたプラスチック粒についてどのような物質が含まれていて、一粒あたりの濃度がどの程度か、を調べた研究はなく、プラスチックの海洋生物への影響を評価するための重要なデータが得られた。これらの物質は、プラスチックを摂食した海鳥に同時に暴露される可能性があり、複合的な内分泌撹乱の可能性が考えられる。また、プラスチック由来の化学物質の蓄積現象を明らかにしていく上で、重要な指標となる物質を特定することに成功したと考えられる。 上記に加え、水環境のプラスチック汚染について調べるため、東京湾、多摩川、山中湖などの魚類によるプラスチック摂食について調べた。これまで日本で魚類のプラスチックを調べた研究はほぼなく、また東京湾の魚類において、洗顔料などのパーソナルケア製品に含まれるプラスチック(マイクロビーズ)の摂食を世界で初めて明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
試料の提供が提供者の都合で遅れており、分析予定だったもののうち一部は分析できなかった(ハワイ、オーストラリアの試料)。一方で、プラスチック由来で鳥に蓄積するリスクの高い物質を特定し、対象成分を広げる実験を大きく進めることができた。このことで、今後分析する試料について、より多角的に議論することが可能となるデータを得られると考えられる。内容は予定と異なるが、進捗状況としては順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず平成27年度に行った、海鳥の摂食プラスチック中化学物質の網羅的な分析によって検出された未同定の化学物質の同定を行う。その後、先の分析によって検出された全ての物質について、海鳥の体組織、プラスチック中濃度を測定するための分析法の確立を行う。方法が確立したら、実際の海鳥の体組織中での濃度をはかり、また同じ個体の摂食していたプラスチック中の濃度と比較することで、プラスチック由来の化学物質の蓄積について調べる。具体的には、個体ごとに異なる化学物質の散発的な蓄積があるか、またそれが同じ個体の摂食プラスチックに含まれるか、という点に注目する。
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Research Products
(5 results)