2014 Fiscal Year Annual Research Report
低出力レーザーを用いた神経幹細胞の増殖促進とニューロジェネシスに関する研究
Project/Area Number |
14J08139
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
福崎 由美 創価大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 低出力レーザー照射 / 神経幹/前駆細胞 / Akt / 細胞増殖 / 細胞遊走 |
Outline of Annual Research Achievements |
低出力レーザー照射 (以下、LLI: Low-power laser irradiation)には皮膚の創傷治癒や脳外傷の治療効果があることが報告され、神経幹/前駆細胞(以下、NSPCs:Neural Stem/Progenitor Cells)に影響を及ぼすことが示唆されている。近年、大脳皮質第1層のNSPCsが軽度脳虚血で増殖促進され、抑制性神経細胞に分化しながら遊走することが報告されたことから、本研究では大脳し皮質第1層のNSPCsに着目し532 nm LLIが細胞増殖と細胞遊走に影響を及ぼすのかin vitroとin vivoの実験系で検討した。 NSPCsはマウスの興奮性神経細胞が増殖するE10の前脳と、抑制性神経細胞が増殖するE14の内側基底核隆起から培養した。LLIは60 mWで20、40、60分間行った。細胞増殖率の測定では、E10前脳由来のNSPCsの増殖を有意に促進したが、E14内側基底核隆起由来の細胞は変化がなかった。一方で、細胞遊走度を算出したところ、E14内側基底核隆起由来の細胞はLLIによって細胞遊走が促進された。ウエスタンブロットでの検討で、Akt の発現量はLLIによって増加した。(in vitro) 成体マウスの両側総頚動脈を閉塞し10分後に再灌流させた。再灌流から24時間後に頭蓋骨を露出し左一次聴覚皮質野にLLIを60分間行い右一次聴覚皮質野は非照射コントロールとした。EdU (5-ethynyl-2’-deoxyuridine)は照射直後に腹腔注射した。照射から1、5日後に増殖細胞マーカー(Ki67)、抑制性神経細胞マーカー(Gad67)、S期マーカー(EdU)で多重染色し細胞分布を算出した。大脳新皮質第1層にGad67発現性の増殖期細胞(Ki67+,Gad67+, EdU+)と遊走期細胞(Ki67-, Gad67+, EdU+)が観察された。層ごとの分析ではLLIが非照射に比べ深い層へ遊走を促進した。ウエスタンブロットでの検討で、Aktの発現と活性化はLLIによって増加した。(in vivo) 以上の結果から、532 nm LLIはGAD67発現性NSPCsの細胞遊走を促進することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ウエスタンブロット法を用いてニューロスフィア法に基づいて作製したマウス胎児由来神経幹/前駆細胞培養細胞と軽度脳虚血マウスの脳組織でAktの発現量を検討した。脳組織(in vivo)での検出は予定通りに進行し、LLIと非照射のデータを算出することができた。しかし、ニューロスフィアの培養細胞を用いた実験(in vitro)では細胞を回収しサンプルとする際に、ニューロスフィアの粉砕方法の確立や、ニューロスフィアの総数やタンパク量が少ないことからがん細胞を用いた実験と比較して、適切なバンドの検出が行えず方法を確立するのに研究計画の予定よりも多くの時間を必要とした。がん細胞でのウエスタンブロットと比較しながら、タンパク量の測定にマイクロBSAアッセイを用いて、細胞回収率や一次抗体と二次抗体の濃度、ブロッキングの種類と時間を全て見直すことでニューロスフィア培養細胞のサンプルで最終的にAktのタンパク質量を検出することに成功した。
脳切片の染色(EdU/Gad67/Ki67)では、ベクター社のM.O.M(mouse on mouse)を使用することで、マウス抗体をしようしていたGAD67染色がより明瞭な多重染色切片となった。すべての切片は共焦点レーザー走査顕微鏡で観察し大脳新皮質における細胞分布を算出した。
方法の見直しと確立には予定よりも時間を費やしたが、in vivoとin vitroの両方の実験系において免疫蛍光染色とウエスタンブロット解析を同時進行で遂行したことで、おおむね当初研究目的の達成度となった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 蛍光タンパク質 (膜ターゲティングGFP) とWPRE配列を有するcDNAを作製し、偽レトロウィルスによる感染もしくはエレクトロポレーションによりマウス大脳新皮質細胞に蛍光タンパク質をCMVプロモーターにより発現させる。GFP発現細胞の遊走を観察することで、532 nm LLIによる細胞遊走への影響をより明確なものにする。
(2) 細胞遊走に関与する細胞外マトリクスタンパク質と発生・発達時に内側基底核隆起由来の細胞抑制性神経幹細胞に発現するNkx2.1を免疫蛍光染色し共焦点レーザー走査顕微鏡で観察する。それらの発現量はウエスタンブロット法も用いて検出していく。
(3)本研究では両側総頚動脈閉塞(CCAO:common carotid artery occlusion)による軽度脳虚血マウスモデルを用いてきたが、加えて中大脳動脈閉塞(MCAO:middle cerebral artery occlusion)の脳卒中モデルにおいてもLLIがどのように効果をもたらすのか検討していく。
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Research Products
(3 results)