2014 Fiscal Year Annual Research Report
DJ-1機能解明を目指した小分子リガンドの開発とその応用
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14J08172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田代 晋也 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | DJ-1 / スクリーニング / 阻害剤 / PARK7 |
Outline of Annual Research Achievements |
DJ-1は種々の癌において過剰発現し、癌増殖への寄与が確認されている蛋白質である。本研究ではDJ-1の機能阻害剤の開発をめざしている。 平成26年度の研究では、我々の先行研究により既に同定されていたDJ-1結合化合物Aの結合様式の精査と、それに基づいた化合物の伸長を行った。 まず構造様式の精査は、DJ-1と化合物Aの共結晶構造解析、共結晶構造に基づいた変異体解析によって行った。共結晶構造から化合物AはDJ-1のCys106周辺ポケットに結合していることが明らかとなった。等温滴定型熱量測定法(ITC)による測定の結果、解離平衡定数Kdは約3μMであった。DJ-1の野生型に比べ、Cys106変異体は化合物Aに対して非常に弱い親和性をITC測定中で示したことから、化合物AとDJ-1の結合ではCys106が重要な役割を果たしていることが推察された。これは溶液中でも結晶構造に類似した結合様式を形成していることを示す。 続いて共結晶構造に基づき、化合物Aの伸長を試みた。共結晶構造から、化合物A内のDJ-1との親和性に重要な部位と重要でない部位を推測し、重要でない部位に対する官能基付加を行った。得られた化合物とDJ-1の親和性をITCによって評価した。結果、基となった化合物Aと比べ、親和性にして約3~5倍向上した化合物が、複数の部位に関して得られた。続いて、親和性が向上した官能基付加を組み合わせることにより、化合物の親和性はさらに向上し、最終的にKd=60~100nMの親和性を示す化合物が得られた。これは基となった化合物A(Kd=3μM)と比較すると約30~50倍の親和性の向上である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標はDJ-1に結合・機能を阻害する化合物を同定・評価することである。申請当初の計画では、初年度前半にDJ-1結合化合物AとDJ-1の結合様式の精査を行い、初年度後半から次年度前半にかけて化合物Aの伸長による親和性の向上、次年度後半において伸長後の化合物の細胞アッセイによる評価を行う予定であった。親和性向上の目標としては、Kd=数百nMを目標としていた。 これまでの達成度に関して述べると、平成26年度の研究では、DJ-1結合化合物AとDJ-1の結合様式の精査、さらに伸長による親和性の向上を行った。具体的には、結合様式の精査の結果、化合物AとDJ-1の親和性、DJ-1と化合物Aの共結晶構造が明らかとなった。親和性向上の結果としては、化合物Aに比べ約30~50倍親和性の強い化合物が得られ、最終的な親和性はKd=100 nMに達した。並行して化合物によるDJ-1の酵素活性の阻害も確認したところ、伸長後の化合物はIC50 =200 nM程度の阻害率を示した。結果として研究目標であったKd=数百nMの親和性で結合・阻害する化合物を取得したといえる。 冒頭に示したように、当初の計画では、平成26年度は化合物Aの結合様式の精査及び化合物Aの伸長を行う予定であり、化合物の伸長に関しては平成27年度前半も行う予定であった。研究の結果、結合様式の精査、化合物の伸長は達成され、目標であったKd=数百nMの親和性で結合する化合物も取得された。よって研究計画は概ね達成されたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目標はDJ-1にKd=数百nMの親和性で結合・機能阻害する化合物を取得することである。そのための研究計画として、平成26年度前半に化合物AとDJ-1の結合様式を精査し、26年度後半から27年度前半にかけて化合物伸長を行い、27年度後半に細胞アッセイを行うという計画を立てた。これまでの研究の結果、化合物の伸長までが終了し、Kd=100 nMの親和性で結合・機能阻害する化合物が得られている。 以上を踏まえると、今後行うべきは、細胞アッセイによる化合物の評価である。そのために現在以下の計画を立てている。(平成27年度前半)細胞内でのDJ-1の機能アッセイの確立。DJ-1はこれまでにいくつかの生化学的機能が報告されている。それらの中でも特に信憑性が高いと考えられる機能に関して、細胞内で検出を行う系を確立する。(平成27年度後半)確立された系について、化合物を加えた場合と加えなかった場合に関して変化が起きるかどうかを確認する。 以上2段階の計画により、化合物による細胞内でのDJ-1の機能の阻害を検出する。
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Research Products
(3 results)