2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J08357
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
高田 宏史 国際基督教大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 世俗主義 / 政治 / 宗教 / 多文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度の研究の成果は次の通りである。まず、当年度は研究計画を若干修正し、ポスト世俗主義論――とりわけ、ポストモダニズムやポストコロニアリズムの理論を援用したタイプのそれ――における、「社会統合」をめぐる議論の整理・分析を行い、その現代政治理論的意義を分節化した。具体的には、’On the Limits of Liberal Secularism: Can Liberal Democracy Represent Religious Minorities?’ (政治哲学研究会、2014年8月)および「世俗主義は宗教的少数派を代理=表象できるのか――ポスト世俗主義の視座から」(山崎望・山本圭編『ポスト代表制の政治学』(ナカニシヤ出版、2015年3月予定)において、サバ・マハムードとタラル・アサドのポストモダン的ポスト世俗主義論を取り上げ、それとチャールズ・テイラーらのリベラルなポスト世俗主義論と比較し、両者の差異を分節化したうえでその政治理論的意義と限界を明らかにした。イスラーム研究者であるアサドとマハムードのポスト世俗主義論は、諸文化ならびに諸「宗教」間の相互理解の困難から出発し、宗教的多数派による宗教的少数派の代理=表象の不可能性を前提として、「共生」の可能性を問うものであった。また本年度は、来年度の成果発表に向け、ビクー・パレクの多文化主義論の分析に着手した。パレクによる多文化主義の分析と併せ、本年度は「公共宗教」論の分析とその政治理論的意義の分節化のために、ロバート・ベラーによる「グローバルな市民宗教」論を取り上げ、それとホセ・カサノヴァの公共宗教論の比較検討にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度における研究は、当初の予定と順番を入れ替えてはいるものの、三年間の研究計画という観点から言えばおおむね予定通り進行したと言える。当初の予定では、平成26年度においてはポスト世俗主義論とその隣接諸思想(多文化主義、リベラル・ナショナリズム)の比較研究を行い、その成果を発表する予定だった。しかし当年度の比較研究についていえば、多文化主義との比較研究には着手したものの、リベラル・ナショナリズムとの比較研究に関しては未着手であった。その代わりに当年度において、本来は平成27年度以降に予定していたポスト世俗主義におけるデモクラシー/社会統合論の内在分析を主として行い、成果発表を行った。ポスト世俗主義論におけるデモクラシー/社会統合論の内在分析に関していえば、「公共宗教と市民宗教における社会統合」ならびにウイリアム・コノリーにおける世俗主義論とデモクラシー論の分析が残されるのみであり、ほぼ平成27年度に遂行する予定だった研究を完了している。以上のことから、現在までの研究はおおむね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、ポスト世俗主義論の政治理論的意義の分節化のために、引き続き次の三つの課題に取り組んでいく。 まず第一に、ポスト世俗主義論とその隣接諸思想、とりわけ多文化主義ならびにリベラル・ナショナリズム論との比較研究を完成させる。とりわけ多文化主義との比較研究に関しては、すでに平成26年度に着手した研究を完成させ、関連学会・研究会にて口頭発表の上、関連誌に投稿することで成果発表を行う。また、リベラル・ナショナリズムとの比較研究に関しては、デヴィッド・ミラーならびにヤエル・タミールのリベラル・ナショナリズム論の内在分析とポスト世俗主義の思想家としてのウイリアム・コノリーのナショナリズム批判との比較研究に着手し、平成28年度中の成果発表を目指す。 第二にポスト世俗主義におけるデモクラシー論の内在分析を行う。まず、ウイリアム・コノリーのポスト世俗主義論とデモクラシー論との相互連関に関する内在分析を完成させ、成果発表を行う。併せて、ホセ・カサノヴァの公共宗教論における「 "宗教"による社会統合」論を、ハーバーマスのポスト世俗化論ならびにロバート・ベラーのグローバルな市民宗教論とを比較することで、その政治理論的意義の分節化する。これらの研究に関してもすでに平成26年度中に着手しているため、平成27年度中の成果発表を目指す。 最後にポスト世俗主義論の実践的意義に関する研究であるが、平成27年度中に北米またはヨーロッパに調査に向かい、関連学会やシンポジウムに参加したうえで研究者たちとの意見交換を行い、平成28年度に成果発表を行うことができるよう準備を進める予定である。
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Research Products
(2 results)