2015 Fiscal Year Annual Research Report
銀河進化解明に向けたミリ波サブミリ波帯分子分光観測による銀河の熱源診断法の開発
Project/Area Number |
14J08410
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
泉 拓磨 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 活動銀河核 / 熱源診断 / サブミリ波 / 高密度ガス / 星間化学 / 水素再結合線 / 爆発的星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、銀河中心にある超巨大ブラックホールの形成の謎を解明するために、星間塵による減光を受けないミリ波サブミリ波帯分子輝線を用いて、銀河の熱源(活動銀河核 vs 爆発的星形成)診断法を開発することである。平成27年度は、まず、申請者が筆頭研究者としてアタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)に観測提案が採択された、熱源既知(活動銀河核)のNGC 7469中心領域における、シアン化水素(HCN)、ホルミルイオン(HCO+)、硫化炭素(CS)等の高密度ガストレーサーのデータを解析した。申請者の過去の研究で、HCN/HCO+、HCN/CSといった強度比が、活動銀河核では星形成銀河に比べて数倍程度上昇する現象が発見されているが、同じ現象がNGC 7469でも確認された。ただし、高光度活動銀河核であるNGC 7469での強度比は、低光度活動銀河核であるNGC 1097の比より有意に小さい。これは、この輝線強度比は、活動銀河核の明るさ(放射強度)には大きく依存しないことを示唆する。以上の成果はIzumi et al. 2015, ApJ, 811, 39として学術論文化された。
さらに、文献データ等を合計25点収集・解析することで、上記の強度比増加を活動銀河核で広く確認し、自説を裏付けた。そして、分子ガスの密度、温度、光学的厚み、分子存在量などを考慮した徹底的なモデル解析から、この強度比超過の原因は、活動銀河核周辺でHCN分子の量が増加する特異な化学組成が実現していることだと推定した。これは、Izumi et al. 2016a, ApJ, 818, 42として学術論文化された。
さらに、同じくサブミリ波帯で活動銀河核そのものをトレースする輝線として、水素再結合線の観測的研究も推進し、Izumi et al. 2016bとして既に学術論文に受理されている(出版準備中)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
多天体におけるミリ波サブミリは高密度ガストレーサーのデータ解析に基づき、先行研究よりもはるかに有意に活動銀河核におけるHCN輝線超過を裏付けたのは、本研究課題の一つの決算的な結果であり、塵に埋もれた銀河核の発掘・その性質の探査に向けた大きな進歩である。さらに、単なる現象論的結果を提示するだけでなく、徹底したモデル解析を率先して行ない、この強度比超過の原因を系の化学組成の変化に帰着させた点も、物理化学的に正当な熱源探査法の構築の観点から極めて重要である。さらにそこから踏み込み、高光度と低光度の活動銀河核の強度比の比較から、その化学組成を決める要因は、銀河核の放射強度ではないことを提唱した。これは、銀河の化学進化において、非放射性の加熱機構(たとえば、ジェット衝撃波による力学的な加熱)も大きく影響していることを示唆しており、単なる熱源探査だけでなく銀河進化の観点からも重要な成果である。
さらに、同じくサブミリ波帯にあり、活動銀河核に電離されたガスを直接探査できる水素再結合線の観測的研究も推進した。実際にサブミリ波帯の観測データに基づいて、銀河核のごく近傍の物理状態を検討したのは世界的にも初めてであり、その価値は高い。観測結果としては、水素再結合線は非検出であった。この解釈として、活動銀河核の超高密度状態ではサブミリ帯再結合線は極めて放射効率が悪く、ALMA望遠鏡を用いても検出感度が大きく不足していることを、理論解析を交えて報告した。
以上のように、平成27年度は研究課題の達成に向けて着実に歩を進めただけでなく、さらに進んで発展的研究も多く展開した。また、積極的に光赤外天文学分野の研究者との共同研究も推進しており、遠方銀河の星形成活動を探査できる可能性の検討等も進めてきた。したがって、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
過去2年間の研究の結果、確かに活動銀河核ではある種の分子輝線を用いた強度比の増加を確認した。また、その比は系の特異な化学組成に起因することを説明した。一方、その「化学組成」を決定する要因(放射性の加熱か、衝撃波のような力学的な加熱か)は依然決着をみない。申請者の研究からは、力学的加熱が強く示唆されるので、平成28年度はその説の観測的裏付けを目指す。さらなるデータ数の増加、詳細な輝線強度比のモデル化による化学組成の決定なども課題として挙げられる。
また、これまで熱源診断用に取得してきた銀河中心部の高密度ガスデータは、その領域のガスの質量や運動状態の情報を含んでいる。そこで、それらの情報から、銀河中心へのガスの降着過程を解明する研究も推進可能である。実際、銀河中心の数百光年程度の領域では、高密度ガスを母体とする星形成が活発に行われており、申請者はその星形成の影響が系のガスに作用することで、中心の巨大ブラックホールまでさらにガスを落とし込むという理論的な仮説を、自身の保有するデータを中心に検証しつつある。結果は既に学術論文として投稿済である。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] Submillimeter-HCN Diagram for an Energy Diagnostics in the Centers of Galaxies2016
Author(s)
T. Izumi, K. Kohno, S. Aalto, D. Espada, K. Fathi, N. Harada, B. Hatsukade, P.-Y. Hsieh, M. Imanishi, M. Krips, S. Martin, S. Matsushita, D. S. Meier, N. Nakai, K. Nakanishi, E. Shinnerer, K. Sheth, Y. Terashima, and J. L. Turner
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 818
Pages: 42,64
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] ALMA Observations of the Submillimeter Dense Molecular Gas Tracers in the Luminous Type-1 Active Nucleus of NGC 74692015
Author(s)
T. Izumi, K. Kohno, S. Aalto, K. Fathi, N. Harada, M. Imanishi, P.-Y. Hsieh, M. Krips, S. Martin, S. Matsushita, D. S. Meier, K. Nakanishi, N. Nakai, E. Schinnerer, K. Sheth, S. Takano, Y. Terashima, J. L. Turner, et al.
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 811
Pages: 39,53
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] ALMA Deep Field in SSA22: A Concentration of Dusty Starbursts in a z = 3.09 Protocluster Core2015
Author(s)
H. Umehata, Y. Tamura, K. Kohno, R. J. Ivison, D. M. Alexander, J. E. Geach, B. Hatsukade, D. H. Hughes, S. Ikarashi, Y. Kato, T. Izumi, R. Kawabe, M. Kubo, M. Lee, B. Lehmer, R. Makiya, Y. Matsuda, K. Nakanishi, T. Saito, I. Smail, T. Yamada, Y. Yamaguchi, M. S. Yun
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Journal Title
Astrophysical Journal Letters
Volume: 815
Pages: 8,13
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] SXDF-ALMA 1.5 arcmin2 Deep Survey: A Compact Dusty Star-forming Galaxy at z = 2.52015
Author(s)
K. Tadaki, K. Kohno, T. Kodama, S. Ikarashi, I. Aretxaga, S. Berta, K. I. Caputi, J. S. Dunlop, B. Hatsukade, M. Hayashi, D. H. Hughes, R. Ivison, T. Izumi, Y. Koyama, D. Lutz, R. Makiya, Y. Matsuda, K. Nakanishi, W. Rujopakarn, Y. Tamura, H. Umehata, W.-H. Wang, G. W. Wilson, S. Wuyts, Y. Yamaguchi, M. S. Yun
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Journal Title
Astrophysical Journal Letters
Volume: 811
Pages: 3,8
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Compact starbursts in z~3-6 submillimeter galaxies revealed by ALMA2015
Author(s)
S. Ikarashi, R. J. Ivison, K. I. Caputi, I. Aretxaga, J. S. Dunlop, B. Hatsukade, D. H. Hughes, D. Iono, T. Izumi, R. Kawabe, K. Kohno, C. D. P. Lagos, K. Motohara, K. Nakanishi, K. Ohta, Y. Tamura, H. Umehata, G. W. Wilson, K. Yabe, and M. S. Yun
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 810
Pages: 133,144
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Local Instability Signatures in ALMA Observations of Dense Gas in NGC 74692015
Author(s)
K. Fathi, T. Izumi, A. B. Romeo, S. Martin, M. Imanishi, E. Hatziminaoglou, S. Aalto, D. Espada, K. Kohno, M. Krips, S. Matsushita, D. S. Meier, N. Nakai, Y. Terashima
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Journal Title
Astrophysical Journal Letters
Volume: 806
Pages: 34,39
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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