2015 Fiscal Year Annual Research Report
レーザ分光法を用いた、海中現場における海水及び堆積物の化学組成分析手法の開発
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14J08488
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 朋子 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 深海化学分析センサの開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、レーザ分光法を応用し、ターゲットに含まれる化学成分をその場で計測し定量分析する手法を開発している。平成27年度には以下の成果を得た。 (1)リアルタイム定量解析手法の開発 - 統計解析手法と物理モデルによる解析手法とを組み合わせることで、水中LIBSの信号に適した定量解析となることを提案し、水中の固体について得られるLIBSの信号を適切に定量解析する手法を確立した。提案手法を海底岩石に適用するために、海底熱水鉱床付近でみられるさまざまな鉱石を収集し、実験室にて海水中でLIBS計測を行い、現在データベースの作成を進めている。今後、提案手法を岩石データベースに応用し、海底での岩石リアルタイム定量解析手法開発を実現する。 (2)実海域試験 - 昨年度での実海域試験で課題となった自動フォーカスの時間短縮・効率的な信号取得について、共同研究者と協力し改良を行い、12月に実海域試験を実施した。調査域は沖縄沖に見られる海底熱水鉱床(水深約1000m)であった。実海域試験において、1000m超の深海でセンサを1日8時間超、3日間続けて運用することに成功した。熱水鉱床周辺の12地点の岩石を国際原子力機関が提案する陸上鉱山評価プロトコルに従い計測し、取得スペクトルの質・量ともに昨年度の航海から飛躍的に向上した。今後は、取得したデータに(1)で開発している定量解析手法を適用し、海底熱水鉱床地帯の化学マッピングを作成する。 (3)深海用ラマン分光分析装置開発 - 昨年度試作した実験室試験用セットアップをもとに、共同研究者らと協力して深海用ラマン分光分析装置を開発した。今後、開発したラマン分光分析センサを使用し鉱物の信号測定を行い、(1)で開発している定量解析手法へと応用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザ分光分析による海底現場での計測に応用するため、本年度は主にレーザ誘起破壊分光法(LIBS)を用いたリアルタイム定量分析手法の開発・LIBSセンサの実海域試験・ラマン分光分析装置開発に携わり、着実に研究を進めている。リアルタイム定量分析手法では、水中でのレーザアブレーションに適した定量分析手法を開発して水中金属の定量分析に成功した。この成果を学会で発表し、受賞審査のあった2学会(国内1、国際1)で受賞し高い評価を得た。実海域試験では、昨年度と比較し装置の安定性が飛躍的に増し、実用化に向けて期待できる成果を収めた。ラマン分光分析装置については、プロトタイプが完成し来年度よりデータをとることが可能となった。 研究開始当初は、岩石・海水両方について定量分析手法を開発する予定だったが、より複雑な組成をもつ岩石の定量分析が可能となれば海水についても十分応用可能と言えるため、本研究では岩石のリアルタイム定量分析の開発に焦点を当てることとする。来年度は最終目的である、水中岩石のリアルタイム定量分析手法開発に向け、開発した手法を応用することで成果を得られる可能性が十分に見込め、期待通りに研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度として、以下の計画で研究を実施し、海中現場における岩石の化学組成分析手法の開発を実現する。 (1)リアルタイム定量分析手法の開発(岩石データベースへの応用) 昨年度から作成している岩石のデータベースのサンプル数を増やし、提案手法を適用する。定量分析に成功した合金試料の場合と同様に、信号に見られる誤差の解析結果への影響を信号の前処理によって軽減する必要があり、考えられる要因で前処理を行い、最適な定量解析手法を検討する。また、統計定量解析手法として現在検討している多変量解析だけでなく、複雑な関係を自由に表現してモデルを構築できる人工ニューラルネットワークなどの機械学習も検証する予定である。
(2)ラマン分光分析との統合的利用 昨年度開発したラマン分光分析装置を用いて、LIBSと同様に岩石のデータベースを作成する。LIBSの信号とラマン分光分析の信号をそれぞれ用いて多変量解析・機械学習により定量解析をした場合と2つの信号を統合して解析した場合、データベースの質・量が増えたことにより定量解析精度が向上するかを検討する。
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Research Products
(4 results)