2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J08602
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李 嘉衣 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 確率偏微分方程式 / アレン・カーン方程式 / 反応拡散方程式 / 界面ダイナミクス / 平均曲率流 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、確率反応拡散方程式の解の漸近挙動、特に鋭敏な界面極限についての研究を行った。研究対象であるアレン・カーン方程式は相転移現象、界面モデルなどの物理現象を記述する方程式であり、十分小さいε>0によりパラメータ付けされている。このパラメータは転移層の幅に関係しており、我々の興味の対象は転移層の幅が限りなく小さくなり界面が鋭敏となった時の解の挙動である。この極限を鋭敏な界面極限と呼ぶ。 今年度は特に空間一次元かつ加法的ノイズとして時空ホワイトノイズを加えた確率偏微分方程式について考えた。1995年、舟木により既に界面が生成された初期値に対して、界面の運動を表す確率微分方程式が特定された。特に界面が運動するための適切な時間スケールはεの負冪のオーダーであり、CarrとPegoによるランダムではない偏微分方程式の場合に比べて短い時間スケールとなった。この差異は時空ホワイトノイズからの寄与に他ならない。 本年度の研究においては、初期値において界面が生成されていない場合の確率アレン・カーン方程式の解の挙動について調べた。ここで加法的ノイズとして空間変数について滑らかなQ-ブラウン運動と時空ホワイトノイズを採用した。どちらの場合も0(ε|logε|)の非常に短い時刻において界面の生成が起こり、その後は舟木の結果に繋げられることを示した。Q-ブラウン運動の場合を示す過程において、偏微分方程式の最大値原理を応用し確率偏微分方程式の比較定理を示した。時空ホワイトノイズの場合は最大値原理の応用のみで結果を導出することが困難であったため、解のエネルギー評価によりリアプノフ汎関数の最小化元への収束により界面の生成を示した。以上の結果を現在論文としてまとめている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば現時点で論文の投稿をする予定であったが、9. において述べた時空ホワイトノイズの場合の解析に予定より時間がかかった。時空ホワイトノイズの場合は偏微分方程式の比較定理の応用のみで解析することが困難であったため滑らかな近似を行ったが、この見立てに間違いがあり一から証明をやり直した。結果としては汎関数による評価で最小化元への収束を示した。以上の方針転換が進行の遅れた主な原因である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は一次元において適当な境界条件を導入した場合や多次元の場合を考察したいと考えている。一次元かつ境界条件が導入された場合は、リャプノフ汎関数や最小化元の構造が変わり、全ての評価をやり直すことになる。また多次元の場合は偏微分方程式の場合と同様に優解と劣解の構成を行うことにより、界面の挙動は平均曲率流にノイズが加わった形で表現されことが示すことができると考えられる。 以上のように数多くの問題が残されているが、一つ一つの解析はデリケートであり、慎重に行う必要があると考えられる。ただし、いずれにしても今は論文をまとめることが最優先である。
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Research Products
(2 results)