2014 Fiscal Year Annual Research Report
非労働力化の決定要因及び労働市場政策の効果に関する研究
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14J08669
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊地 信義 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 無業 / 生存時間分析 / 比例ハザードモデル / 労働経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生存時間分析を主たる手法として用いる、失業または無業者の状態移行に関する研究である。研究の第一段階として今年度は、特に無業者の状態移行の問題により集中して取り組んだ。研究の目的は、性別、学歴、前職歴等、どのような個人属性が無業の長期化と関連するかを実証的に明らかにすることである。 上記の目的を達成するために、初年度である今年度は主に、(1)次年度以降のより詳細な分析のためのデータの整備、(2)基本的な統計解析、を実施した。 (1)データ整備 : 統計法第33条に基づいて、総務省に就業構造基本調査の調査票情報の利用申請を行い、データの提供を受けた。就業構造基本調査は質問票の変更があったため、調査年度間の単純な比較が困難な質問項目がある。勤続年数など、年度間で質問の形式が大きく変更されたため統合がより困難な質問項目については、いくつかの統合変数を作成し、分析結果が変数の定義によらないものであるかの確認が可能になるようにした。 (2)基本的な統計解析 : 基本的な統計解析の目的は、長期的なトレンドと変化が個人属性ごとにどのように異なるかを確認し、次年度以降の詳細な分析のための下準備をすることである。 本年度は、Kaplan-Meier生存曲線の推定、Cox比例ハザードモデルの推定を行った。記述統計や男女・最終学歴別の無業期間のKaplan-Meier生存曲線の推定結果では、2000-2012年の無業期間の単純な長期化のトレンドは観察されなかった。Cox比例ハザードモデルについては、分析の結果、離職時の年齢、非自発的離職、前職が非正規雇用であることが、就業確率に負の影響を与えていることがわかった。また最終学歴は、就業確率に正の効果を持つものの統計的に有意ではない場合もあり、必ずしもロバストな結果ではなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、次年度以降の本格的な実証分析の準備のための、失業者・無業者の実態に関する質的調査、分析データの整備及び整備したデータの基本的な統計解析を行うことを目標としていたが、予定していた作業をおおむね完了し、個人属性によって無業期間や就業確率が異なるかという問題に関する暫定的な分析結果を出せたため、順調に進展とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、就業構造基本調査を用いた無業の継続時間に関する分析を行う。特に、無業期間の分布の分位点での個人属性の変化の異なる影響を明らかにするため、分位点分解の分析などを進める。
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