2014 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ細孔内部における吸着および移動現象の解析と制御
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14J08748
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 恭平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 分子動力学 / メソポーラスシリカ / ナノ細孔 / 水蒸気吸脱着 |
Outline of Annual Research Achievements |
メソサイズ(2-10 nm)の均一且つ高度に配列した細孔構造を得ることができるメソポーラスシリカへの水蒸気吸脱着は特定の狭い相対圧力範囲で毛管凝縮・毛管蒸発による大きな吸着量の増減を示し、また、従来の吸着材に比べて大きな吸着量を得ることができることから次世代の高性能なデシカント材への応用が期待されている。本研究では、メソポーラスシリカ内部における水の吸着および移動現象について着目して研究を行い、メソポーラスシリカへの水の吸着および移動現象を分子レベルで明らかにすることで、より速い吸着や少ないエネルギーでの脱着を可能とする水蒸気吸着材の材料設計や制御法の提案を行うこと目的とする。 今年度はモデル化したメソポーラスシリカ内部へ水が吸着する緩和過程について非平衡分子動力学シミュレーションを行い、細孔内壁面を沿って液膜が進む場合と、メニスカスを形成して液柱が進む場合の2つの水の移動機構について、細孔内での局所的な密度や自己拡散係数、速度などを解析し、吸着する動特性について連続体との比較を行った。また、水が移動する活性化エネルギーを評価した結果、液膜で水が移動する場合は液膜厚さの増加に伴い活性化エネルギーが減少し、細孔表面のエネルギーバリアに起因している一方、液柱の場合は水の粘性に起因していることを明らかにした。 続いて、粗略化水分子モデルを用いて親水性ナノ細孔から脱着する水の非平行分子動力学シミュレーションを行った。比較的稀である蒸発現象を分子動力学法により解析するために、粗略化された水分子モデルを導入し、親水性ナノ細孔-水の系を提案し、モデルの妥当性を確認した。細孔に吸着した水が真空へ脱着する速度は細孔の親水性に依らず同等であったが、細孔入り口に移動し蒸発するまでの水の移動機構は異なり、親水性が高く吸着層が形成されることにより凝縮した水の移動が促進されることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メソポーラスシリカ内部での水蒸気吸着過程における水の移動現象について、液膜の場合と液柱の場合について連続体との比較や、水の移動の活性化エネルギーの評価を行い、細孔内の水の移動において凝縮した水の形態(液膜の厚さや液柱のメニスカス曲率)が水の移動に大きく影響していることを明らかにした。ここで得られた研究成果は学術誌において発表を行っている。 比較的長時間スケールである蒸発現象を取り扱えるように粗略化した水分子モデルを導入し、親水性ナノ細孔-水系のモデルを提案した。この粗略化した計算モデルを用いて真空への毛管蒸発過程について解くことができた。この研究成果については現在学術誌への発表に向けて準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、粗略化した水分子-親水性ナノ細孔の系について、親水性が異なる細孔をモデル化し、吸着した水が真空へ脱着する系についてシミュレーションを行った。次年度においては、まず、気相空間の境界条件を真空だけでなく特定の圧力(化学ポテンシャル)に制御する手法を提案し、様々な圧力差により駆動される脱着の速度や細孔内の移動を解析する。また、吸着速度を測定した実験との比較を行い、脱着過程の動特性についてモデル化を行う。続いて、細孔径や親水性、表面粗さの異なる細孔をモデル化し、吸脱着過程において細孔内の水の移動を促進させるナノ細孔材料の提案を行う。
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Research Products
(4 results)