2014 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫寄生性糸状菌による病原体ベクターの媒介能インアクティベーション
Project/Area Number |
14J08772
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
石井 嶺広 岩手大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 昆虫寄生菌 / 感染症媒介蚊 / 微生物的防除 / 行動制御 / 衛生害虫 / 農業害虫 / マラリア / 植物ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫寄生菌が病原体ベクターに与える致死効果だけでなく亜致死効果(行動制御等)から、病原体伝播の阻害効果という視点で菌の防除効果を評価し、新しいベクター防除技術を確立することが本研究の目的である。本研究では、衛生害虫および農業害虫からモデルベクターを選出し、行動学的な視点から菌感染による「ベクターの不活性化」を評価した。 本年度は衛生害虫からハマダラカをモデルベクターとして採用し、菌感染による行動変化を経時的に評価した。ハマダラカの行動解析には自動行動アッセイ装置を用いた。本装置を用いた試験の結果、ハマダラカは菌感染3日目に「熱(40℃)」に対する誘引性が急激に低下し、6日目から「色(黒)」に対する誘引性が徐々に低下する傾向にあった。また、「臭い(二酸化炭素)」に対する宿主探索行動を評価するためにY字管型オルファクトメータを用いた。その結果、菌感染2日目から二酸化炭素への誘引数が対照区の約半数まで低下し、7日目には二酸化炭素への誘引がほぼなくなっていた。これらの結果から、昆虫寄生菌が感染することによって、ハマダラカが「熱」・「色」・「臭い」を認識することができなくなり、宿主探索が不可能となっていることが示唆される。また、脱繊維血をカップに入れパラフィルムで封入したものをハマダラカに吸血させる試験を行うことによって、菌感染による蚊の吸血行動の変化を評価した。その結果、対照区における吸血率はどの日数においても8割程度であったが、菌処理区では感染3日目に4割程度まで低下し以降低下し続ける結果となった。以上の試験により、昆虫寄生菌の感染によってハマダラカの「宿主探索行動・吸血行動」が阻害されることが明らかとなった。これらの行動阻害は、「感染症伝播リスク」という観点から菌の防除効果を評価する場合、有効な防除効果と見なすことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、年次計画通り衛生害虫であるハマダラカの宿主探索行動および吸血行動を評価することができた。また、次年度から試験予定の農業害虫ネギアザミウマおよびワタアブラムシの飼育形体を確立しており、菌接種によるスクリーニングなども始めている。したがって本年度に達成予定の試験を完了することができ、次年度から開始予定の試験の準備を行なうことができたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からは、農業害虫であるネギアザミウマおよびワタアブラムシに焦点を当て、菌感染による行動変化の評価を行なう予定である。また、本研究では行動評価だけでなく、植物ウイルス等を用いることによってウイルスの伝播試験も合わせて行う予定である。
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Research Products
(4 results)