2015 Fiscal Year Annual Research Report
ベルクソン形而上学再考--「思弁的実在論」の観点から--
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14J08778
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岡嶋 隆佑 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | ベルクソン / 時間論 / 形而上学 / 思弁的実在論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 27 年度は、 (1)ベルクソン形而上学の基礎研究を継続し、その成果を(2)現代の科学の観点から考察すると同時に、(3)近年の新しい思想潮流である思弁的実在論とベルクソンの哲学との争点を確認した。 (1)ベルクソン形而上学については、時間意識論という観点から、『意識の直接与件についての試論』と『物質と記憶』のテクストを詳細に検討した。『試論』には、時間意識の通時的な長さを認める延長説と、これを拒否する把持説の双方を示唆する記述を見出すことができるが、前者には時間的に離れた二つ以上の内容が同時に経験されると主張する点に、後者には時間意識の連続性が確保されないという点にそれぞれ困難がある。この困難を『物質と記憶』は、時間の流れを行動の実現によって説明することで解消していることをテクストに基づいて示し、これまで心身問題の解消という論点のみから解釈されてきた二つの著作のつながりを、時間(意識)論の観点から明らかにした。 (2)さらに前年度の研究と(1)で得られた成果を現代の科学の観点から考察する研究に着手した。具体的にはまず、ベルクソンの形而上学における最も重要な「収縮」の概念について、現代の心理学の実験の知見と両立可能なモデルの提示を試みた。またこれと並行的に、主に相対論とベルクソンの知覚論の関係について批判的な検討を行った。 (3)思弁的実在論については、まず、この動向の一つのルーツであるドゥルーズについて、『ベルクソンの哲学』で提示された諸解釈を詳細に検討し、時間論の存在論への従属、および多元論でなく一元論というドゥルーズのベルクソン解釈がテクストに即したものではなく、著者自身の哲学の表れであることを明確にした。またこの動向の中心人物であるメイヤスーについては、『有限性の後で』では不明瞭な点を、未出版の博士論文『神の不在』の観点から補うような考察を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績は、平成27年度の年次計画におおむね沿うものであり、口頭発表、論文掲載という形でその成果を公表することができた。したがって、これまでのところ研究はほぼ順調に進展していると言うことができる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度および今年度のサーヴェイの成果から、思弁的実在論については、中心人物であるメイヤスーと、この動向の一つのルーツであるドゥルーズに限定して研究を進めることによってより生産的な議論が構成できることが見込まれるため、基本的にはこの二者に限定してベルクソンとの対照を行うこととする。またこれと並行して、べルクソンのテクストの精読、および現代の科学からの批判的検討も継続する。
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Research Products
(3 results)