2015 Fiscal Year Annual Research Report
強凸でないモーメント錐に対応する連結コンパクト接触トーリック多様体の分類
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14J08848
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
興津 優史 東京大学, 数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 接触トーリック多様体 / シンプレクティックカット / コンタクトカット / トポロジカルカット |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では3つの目標を設定した。すなわち:1.強凸でない接触トーリック多様体の diffeo-type の分類および同じ diffeo-type を持つような系列の発見。 2.強凸でない接触トーリック多様体上の性質のよい計量構造の発見。 3.強凸でない接触トーリック多様体の接触トポロジー的あるいはトーリックトポロジー的な分類の3つである。昨年度の研究では、強凸でない接触トーリック多様体の diffeo-type の分類について、球面とトーラスの直積多様体と微分同相となるようなものを可算個発見したが、今年度の研究にて、それらがモーメント像を保たないトーリック同変接触同相写像で移りあうことを発見した。これは K.Cho, A.Futaki, H.Ono, Uniqueness and Examples of Compact Toric Sasaki-Einstein Metrics に見られるような強凸な場合のトーリックダイアグラムの議論を応用することで示すことができる。また、これから球面とトーラスの直積多様体以外の強凸でない接触トーリック多様体は存在しないことも分かる。以上により強凸接触トーリック多様体の diffeo-type は球面とトーラスの直積のみであると結論付けることができる。これによって、問題1は完全に解決されたが、強凸でない接触トーリック多様体の幾何学は豊かではないということも判明した。また、トーリック同変接触同型であることもわかったので、トーリックトポロジー的にもシンプルな対象であることになる。したがって、強凸でない接触トーリック多様体についての研究としては問題1~3について、ひと段落したように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究を開始した当初は強凸でない接触トーリック多様体の幾何学について豊かな幾何学があると考えていたが、研究を進める内にその diffeo-type, contactomorphism-type がシンプルなものしかないことが判明した。したがって、やや残念な形ではあるが研究当初の目的を達成することができたと考えている。さらに、強凸でない接触トーリック多様体の分類が完了した後の研究テーマとして、カット構成の応用という観点から Tall complexity one 空間へのカット構成の応用を選定した。これは Y.Karshon-S.Tolman が定義・分類した多様体である。この研究について具体的な成果として発表したものはまだないが、カット構成は、同変 symplectic blow-up の一般化であるためこれらの多様体の変形と相性がよく応用の目途もある程度立っている。以上の理由によりおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は強凸でない接触トーリック多様体を構成するためのカット構成について、より深い研究を行うという方向性の研究を行う。具体的には、Y.Karshon-S.Tolman らが定義・分類した Tall complexity one 空間の変形に対しての応用を期待している。Karshon-Tolman 曰く、Tall complexity one 空間とは2n次元の多様体でn-1次元のトーラスのハミルトン作用をもつような空間で、不変量として、i.そのモーメント写像の像・ii.モーメント写像による1点のレベル集合のトーラス作用による商空間の種数g(一定である)・iii.種数gのリーマン面への例外軌道集合(スケルトンと呼ぶ)からの写像(のホモトピー類、これをペインティングという)・iv.Duistermaat-Heckman 測度の4つがとれ、これらの情報からTall complexity one 空間は構成できる。その構成はモーメント像を十分小さな凸開集合で被覆し、それぞれの領域に対して局所モデルを作ってから全体で張り合わせるという方法をとっているため、不変量の空間がどういうものか、出来上がった多様体の性質について、例えばケーラーか?トーリックか?ということが分かりにくいように思う。そこでカット構成を Tall complexity one 空間に応用することによって、Tall complexity one 空間のより詳細な性質を知ることができるようになると考えている。現段階では、まず、種数が0かつペインティングが高々2つの値をとる場合にトーリックとなるか?という問題の解決を目標とする。(逆が成立することは知られている。)
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