2014 Fiscal Year Annual Research Report
自己複製システムの実現を目指した新規人工二重らせん分子および高分子の創製と応用
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14J08886
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田邉 純樹 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 二重らせん / カルボン酸 / アミジン / アントラセン / 塩橋 / 不斉識別 / テンプレート合成 / キラリティー |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者の研究グループではこれまでに、キラルなアミジン基およびアキラルなカルボキシル基を側鎖に有する相補的な分子鎖が、塩橋を介して一方向巻きに片寄った相補的な二重らせん構造を形成することを見出している。本研究では、1) 二重らせん構造を足場とした相補鎖の不斉および配列の認識、および 2) 光二量化を利用した相補鎖の鋳型合成について検討を行った。 1) 光学活性なアミドリンカー部位を有するアミジン二量体および配列の異なるラセミのアミドリンカー部位を有するカルボン酸二量体をそれぞれ合成し、アミジニウム-カルボキシレート塩橋を介した相補的な二重らせん形成について詳細に検討を行った。その結果、興味深いことに、アミジン二量体は、カルボン酸二量体のリンカー部位の不斉と配列をほぼ100%の選択性で識別して相補的な二重らせんを形成することが分かった。本研究成果は、極めて高い不斉および配列選択性を分子レベルで達成しただけでなく、二重らせん構造の特徴を活用した新規なキラル材料の開発にも繋がると期待される。 2) 片末端にアントラセン部位を有するカルボン酸モノマーを新たに合成した。カルボン酸モノマーのCDCl3溶液に400 nm以上の光を照射した結果、アントラセン同士の光二量化反応は進行せず、アントラセンと酸素が反応した酸化体が定量的に生成したことが分かった。一方、アミジンテンプレート存在下で同様の反応を行ったところ、酸化体はほぼ生成せず、アントラセン同士が反応した二量体およびアントラセンとアセチレン部位が反応した二量体が得られた。これは、テンプレート上に塩橋を介してモノマーが配列することによって、光二量化反応が効率良く進行したためと考えられ、テンプレート上での反応として、光反応も有用であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、光学活性なアミドリンカーを有するアミジン二量体と、配列の異なるラセミのアミドリンカーを有するカルボン酸二量体の二重らせん形成について調べた。その結果、アミジン二量体はカルボン酸二量体のリンカー部位の不斉と配列をほぼ完全に認識し、塩橋を介した二重らせんを形成することが明らかとなった。この成果は、既に論文として国際誌に受理された。さらに、片末端にアントラセンを有するカルボン酸モノマーの光反応挙動についても検討しており、アミジンテンプレート存在下で光を照射することによって、モノマー同士の光二量化反応が効率的に進行することを見出した。この成果は、論文投稿準備中の段階にある。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、主鎖骨格の両末端にアントラセンを導入した相補的なモノマーを合成し、テンプレートポリマー存在下、アントラセンの光二量化により、かさ高い二量体がリンカー部位に組み込まれた二重らせんポリマーが生成するかどうか調べる。生じた二重らせん分子は、かさ高いリンカー部位の影響により、一重鎖へと解離することが予想され、それをCDや吸収スペクトルなどにより調べる。解離後のテンプレート分子が再び鋳型として機能することで、光照射による相補鎖の触媒的な増殖が可能になると考えられ、その実現を目指す。
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Research Products
(6 results)