2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J08942
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山﨑 杏子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 維管束 / 形態形成 / 植物病原細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宿主の維管束分化を制御する病原体を利用し、植物の維管束形成メカニズムの解明を目指す。初年度は、計画の通りシロイヌナズナーファイトプラズマ感染系の確立ならびに、感染に伴う遺伝子発現変動の解析を行った。まずは、接種後の植物が枯死することなく、萎縮やアントシアニンの蓄積などの巨視的な生育異常を示す条件を検討し、播種後21日のシロイヌナズナに病原体保毒虫3頭を接種する方法を選択した。実際に、同条件で接種を行い高濃度の病原体感染が確認された植物について維管束形態を観察したところ、全個体で花茎の肥大が抑制され、うち33%の個体では非感染植物と比較して篩部が増生する形態異常が見られた。 また、遺伝子発現解析として、感染後の1時点で感染植物ー非感染植物間の遺伝子発現を比較した。発現上昇する遺伝子には、スクロース合成遺伝子やウイルス抵抗性レクチン遺伝子など、篩部で特異的に発現することが知られている遺伝子が含まれていた。また興味深いことに、形成層で発現することが示されている遺伝子の一部も発現上昇していた。これらの感染時に発現変動し、かつ通常時に維管束で発現する遺伝子は次年度以降の解析対象となる候補遺伝子として選定した。一方、維管束以外で発現する組織特異的遺伝子は、感染に伴う発現変動が少ない傾向にあった。病原体は植物の篩部のみに局在するにもかかわらず、形成層における遺伝子発現にも影響していた。形成層は花茎の肥大成長を担う分裂組織であることから、病原体が形成層の機能に影響することで花茎の肥大抑制現象を引き起こす可能性が考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に計画していた研究内容は、感染実験系の確立および感染植物における遺伝子発現変動解析よび候補遺伝子の選定である。実際に接種期間や接種に使用する病原体保毒虫の数を検討し、維管束への影響が見られる接種条件を設定することに成功した。遺伝子発現変動を解析については、当初異なる個体を継時的にサンプリングする予定であった。しかしながら上述の実験系では病原体感染濃度や形態異常の程度に接種植物間で個体差が見られることから、感染後の1時点で遺伝子発現を比較し、病原体感染が維管束の形成層に影響している可能性を示唆するデータを得た。また感染時に発現変動し、通常時は形成層や篩部で発現するという条件を満たす候補遺伝子群を見いだした。以上のように、手法の変更はあったものの、おおむね計画通りに研究が進展したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究の結果から、病原体感染植物では高頻度で花茎の肥大が抑制されること、花茎肥大を担う分裂組織である形成層で発現する遺伝子の発現が変動することが明らかになった。これは、病原体が篩部形成に影響するという当初の予想に反して、むしろ高頻度で形成層の機能に影響することを示唆している。受け入れ先研究室では近年、形成層細胞をin vitroで分化する技術を開発しており、形成層細胞の機能解析を行う上で有用であると期待されている。そこで今後は研究計画を変更し、初年度で選定した候補遺伝子について、in vitro 分化系を用いた機能解析を行う。
|
Research Products
(4 results)