2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J08942
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山﨑 杏子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 維管束 / 植物ー病原体相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、植物病原細菌であるファイトプラズマが、宿主の維管束発生を撹乱する分子機構を解明することを目的としている。これまでに、モデル植物であるシロイヌナズナを宿主とした感染システムを構築し、宿主植物においては篩部・形成層で発現する遺伝子が主に発現変動し、花茎肥大が抑制されることを見出してきた。 本年度は、植物の肥大成長を担うメリステムである前形成層に着目し、ファイトプラズマが前形成層の遺伝子発現を撹乱することで花茎肥大を抑制するとの仮説のもと、ファイトプラズマ感染時に変動する前形成層発現遺伝子群の抽出を行った。従来、マイクロダイセクションやセルソーターを用いた手法では前形成層の単離が困難であることから、前形成層の発現プロファイルは明らかにされていない。そこで、まずは当研究室で開発された木部細胞の確立を誘導する培養技術 (Vascular Induction System Using Arabidopsis Leaves :VISUAL) で前形成層が分化することを利用し、前形成層分化に伴う遺伝子発現変動を網羅的に明らかにした。得られた前形成層で発現する遺伝子群のうち、ファイトプラズマ感染時に発現変動する遺伝子を選定し、T-DNA挿入系統を入手したところ、ある系統においてはVISUAL系における前形成層の確立が抑制され、前形成層のアイデンティティー確立に関わる可能性が示唆された。近年動植物を問わず幹細胞アイデンティティーを規定するメカニズムの研究はますます発展している。今回、維管束幹細胞を誘導する培養技術が、幹細胞で機能する遺伝子の探索に有効であったことから、今後も同手法を用いて維管束幹細胞の性質を解明をすすめることで植物発生分野のみでなく生物学全体に寄与する知見を得られると考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初本研究計画においては、病原体感染時に発現変動する遺伝子のうち、公共の発現データベースに基づき病原体が主に影響すると予想される篩部組織に特異的な遺伝子に着目してスクリーニングを行う予定であった。しかしながら前年度の結果から、当初の予想に反して病原体が維管束幹細胞としてふるまう前形成層の機能を阻害する可能性が示唆されたことから、この計画を変更し、形成層組織特異的遺伝子に着目することとした。公共データベース上には形成層の発現プロファイルとして適切なデータなかったため、独自の培養技術において形成層確立時に特異的に働く遺伝子群を単離し、候補因子の選定に用いた。このような計画の変更はあったものの、すでに入手可能なT-DNA挿入系統のスクリーニングを完了しており、in vitro の維管束分化系で前形成層の確立に関与しうる因子を見出しすことに成功している。また上記の計画変更の結果、維管束幹細胞の分化時に特異的に発現する遺伝子群を解明するという、当初予定していなかった成果を得ることができた。このことから、本年度は当初の計画以上の研究の進展があったと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度までに見出された因子について、維管束の発生にどのように機能するか解析する。具体的には、プロモーター活性を可視化するマーカーラインを作出し、機能場所を明らかにする。また、機能喪失植物、機能獲得植物を作出し、発現部位で形態に与える影響から、維管束発生における機能を明らかにする。
|
Research Products
(2 results)