2015 Fiscal Year Annual Research Report
オペラント条件づけにおける行動の消失過程と復活に関する研究
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14J09014
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
藤巻 峻 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 反応復活 / 消去 / 強化率 / 変化抵抗 / オペラント条件づけ / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず、新しい実験手続きの開発に取り組んだ。従来の手続きは、実験セッション内で動物個体が自由に反応できるフリーオペラント事態であった。しかしこの手続きでは十分な反応復活が生じないこともしばしば報告されてきた。そこで、標的反応の獲得、標的反応の消失と代替反応の獲得、反応復活テストを1セッション内で実施する単一セッション型手続きと、実験セッションを試行単位で行い、個体が1試行に1反応しか自発できない離散試行手続きを開発した。いずれの手続きでも顕著な反応復活が生じることが確認された。これらの手続きの開発は、現象自体が確認しにくく、複雑な実験操作や独立変数のパラメトリックな操作が困難であるという反応復活研究の問題点を克服し、より厳密に制御変数を探求する道を開いた点で重要な成果である。 本研究の中心的な課題は、標的反応の消失パターンと反応復活の関係性を検証することである。標的反応に対する減少操作を変えるという方法でこの問題に取り組んだが、条件間で顕著な差を見出すことができなかった。そのため、標的反応の強化率、代替反応の強化率を変えることで、同様の課題を検証した。その結果、強化率が高くなるほどより強い反応復活が生じるが、そのパターンは異なることが明らかになった。具体的には、代替反応の強化率を操作した場合、一定の強化率までは復活の強度が同程度であるが、一定以上の強化率になると明らかに復活の強度が高くなるという結果であった。 これらの結果から、標的反応の強化率は反応復活の強さに(どの程度反応が復活するか)、代替反応の強化率は反応復活が生じるかどうかに寄与するという、新しい仮説が導かれた。これは既存のモデルや理論とは一線を画すものであり、反応復活のメカニズムを解き明かす上で重要な発見であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はまず、反応復活という現象を実験的に検証するために、離散試行型手続きと単一セッション型フリーオペラント手続きという、新しい2種類の実験手続きを確立した。反応復活は現象自体が確認しにくく、複雑な実験操作や、独立変数のパラメトリックな操作が困難であった。本研究で確立した手続きでは、いずれも顕著な反応復活が生じることが実験的に確認された。 これらの手続きを用いて、本研究課題である標的反応の消失パターンと反応復活の関係について複数の実験を行った。結果を簡潔にまとめると、代替反応の強化率と反応復活の間には系統的な関係性がないこと、標的反応の強化率が反応復活に及ぼす影響と、代替反応の強化率が反応復活に及ぼす影響は本質的に異なるものである可能性が示唆された。後者に関して具体的に述べると、代替反応の強化率は反応復活の強さではなく、反応復活という現象自体の生じやすさに影響を及ぼす可能性が示されたのである。 これまで多くの研究では、代替反応の強化率は標的反応の強化率とほぼ同じ効果を持ち、どちらもともに反応復活の強さに影響を及ぼすと言われてきた。本研究結果はこうした従来の見解とは異なるものであった。また本研究では当初、単に標的反応の消失パターンの違いが反応復活の強さや生じ方に影響を及ぼすという仮説を立てていた。しかし消失パターンの違いだけでなく、どのようにその消失パターンを生み出したかによっても、復活の強度が変わり得ることを考慮する必要性が、実験的に示されたわけである。その意味で、これらの研究結果は、本研究課題で当初立てていた仮説をさらに前進させる成果として位置づけられるとともに、新たに実施すべき研究の方向性をも示すものであったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、標的反応の強化率は反応復活の強さに、代替反応の強化率は反応復活の生じやすさに影響するという仮説を中心に検証していく。具体的な方法としては、単一セッション型手続きと離散試行手続きの元で、標的反応および代替反応の強化率や強化量をパラメトリックに操作し、それぞれが反応復活に及ぼす影響について検証する。また、代替反応の強化率を徐々に低くしていく希薄化という手続きを用い、代替反応に対する報酬の呈示頻度が突然大きく減少した場合と、わずかな変化ながら徐々に減少した場合とで、反応復活の生じ方がどのように異なってくるかを検証していく。
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Research Products
(9 results)