2014 Fiscal Year Annual Research Report
デイヴィドソンの「三角測量外在主義」の解明とその応用
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14J09022
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木下 頌子 慶應義塾大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 外在主義 / 自然種名 / 指示の因果説 / デイヴィドソン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(A) デイヴィドソンの三角測量外在主義を既存の外在主義を巡る文脈に位置づけ直し、(B)一般的な外在主義が抱える問題に説得的な解決策を提示することである。こうした目的のもとで、本研究員は研究計画に従い、本年度は (A) を達成することを目指した。 (A) の課題の達成のためには、パトナム、バージ、クリプキらの既存の外在主義の解明、とりわけ外在主義の主要な意味と指示の決定のメカニズムである指示の因果説の特徴をあきらかにすることが不可欠である。そこで本研究員は、外在主義が典型的に当てはまるとされる自然種名(「トラ」、「水」など)および、近年注目される人工物名(「ソファ」、「鉛筆」)に関して、指示の因果説の指示決定メカニズムの詳細を探究した。その実施状況は以下である。 指示の因果説は、外界とわれわれとの因果関係に訴えることで、われわれに未知の外界の性質が自然種名の意味や指示を決定することを可能にする。それゆえ、伝統的記述説とは異なり、認識の変化を通じた不変の指示という描像をとらえられると考えられてきた。しかし、近年J. ラポルトは、その共通理解に疑念を向け、指示の因果説のもとでも「不変の指示」という描像は守られないと主張した。本研究員は、この疑念を検討し、その結果、指示の因果説には、指示の確定に記述的要素のはたらきが欠かせないため、そうした記述の改訂が指示の変化につながることをあきらかにした。この成果は、応用哲学会第七回年次研究大会での発表に結びついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
指示の因果説は、外在主義が指示の決定メカニズムを説明するために採用する本質的な役割を果たすものだが、具体的な事例として自然種名や人工種名について考察することで、その内実を明らかにすることが可能となった。その結果、指示の因果説についての従来の理解を修正する見解に至り、その成果を学会発表に結びつけることができた。デイヴィドソンの三角測量外在主義との接続についてはもう少し詳細を詰める必要があるが、因果説の検討をおこなう中で次年度計画されている外在主義の問題を明確化する作業も進められたため、おおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の成果をもとに、さらに一般的な外在主義とデイヴィドソンの三角測量外在主義を進める。さらに、本研究の第二の課題である(B) 一般的な外在主義が抱える問題に対して解決を与えることを試みる。その際、当初目的としていた自己知に関する問題だけではなく、むしろその基礎になる言語と外的環境の適切な因果的結びつきの内実を、デイヴィドソンの知見を生かしつつ、より具体的な言語表現の意味論的考察を通して明らかにすることを試みる。
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Research Products
(2 results)