2014 Fiscal Year Annual Research Report
ロボットによる高度な作業実現のための人の認識・技能の活用
Project/Area Number |
14J09039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 浩光 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | インフラ点検作業 / 遠隔操作ロボット / 打音検査アルゴリズム / 遠隔移動操作における俯瞰映像利用 / 暗所作業における視野明瞭化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「遠隔操作システムにおけるロボットと人の協調による高精度な環境認識・状態診断」を目的としている.当該年度は従来人手で行われてきた高度な認識作業として保守・点検作業に焦点を当て,遠隔操作ロボットによるトンネルの打音検査のために必要不可欠な以下の要素技術の研究を行った. (1)打音検査はハンマ音の正確な聞き分けに熟練を要する作業であり,自動化の要請が高い.当該年度は,検査用ハンマと非接触のマイクロフォンを用いて変状を自動検出するアルゴリズムを構築した.熟練点検工の作業データから打音の特徴量データベースを構築し,データベース内の健状および変状信号との類似性から変状を検出した.実トンネルで評価実験を行い,提案手法がトンネル内の健状・変状識別に適用可能であることを確認した.この成果は,投稿論文として精密工学会誌に掲載され,学術的にも高く評価を受け精密工学会研究奨励賞を受賞した. (2)遠隔操作ロボットの移動では,操縦者にはロボットを第三者視点から俯瞰する視点からの映像を提示することが操作性の観点から有効である.当該年度は,本研究グループで開発してきた俯瞰映像システムを建設ロボットにも適用し,俯瞰映像を利用することで操作性が向上することを実機実験により確認した.この成果は投稿論文として機械学会誌に掲載された. (3)トンネルなどの暗所作業では,細部を照らすために強いライトをロボットに搭載する必要がある.しかし,明暗差の大きい環境では映像中に白とび・黒つぶれが発生し不明瞭となり,ロボットの操作性を著しく低下させる.当該年度は,ロボットに搭載した複数照明を制御することで,映像中の白とび・黒つぶれを除去する画像処理アルゴリズムの基礎を構築し,実機実験によって白とび・黒つぶれのない映像を合成可能であることを確認した.この成果は投稿論文としてAdvanced Maintenanceに掲載が決定した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,ロボットの遠隔操作において人の認識や技能を利用することで,周囲環境の高度な環境認識・状態診断を実現する方法論の確立を目指すものである.平成26年度は,その必要不可欠な要素技術である基礎アルゴリズムの構築を目標として設定した. 成果として具体的には,(1) 打音検査において音響信号からコンクリート変状を検出する信号処理アルゴリズムの構築,(2) 無人化施工における建機への俯瞰映像提示手法の適用および実機評価,(3) 作業時の視野を明瞭化する画像処理アルゴリズムの構築を行い,多面的な方向から研究を行ってきた.研究グループ内のメンバーと協同のプロジェクトで検討を行い,特に各アルゴリズムの評価における実機実験においては企業など協同研究先とも連携した.それらの成果をそれぞれ投稿論文としてまとめ上げ,学会誌に掲載される(1つは掲載決定)など対外的にも業績を残している. さらに並行して,平成27年度に構築する予定のシステムに搭載する3次元計測手法などの研究に関しても着々と下準備を行っており,その成果の一部を論文として審査中である.以上より,平成26年度の研究目標はおおむね順調に達成できていると評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は,より効果的に研究成果を上げるため,当初からの予定通り以下の方策で研究を推進する.
(1)アルゴリズム構築および実機実験による評価:平成27年度は,本研究で提案する認識・診断システム一部として,新たにカメラおよび測距センサを用いた画像処理による計測アルゴリズムを構築し,遠隔操作での点検効率を向上させることを目指す.さらに,この提案アルゴリズムと平成26年度に構築した手法群とを統合した環境認識・診断システムの構築の統合を完了する.平成27年度後期(2015年12月)までには,実際の点検作業現場に相当する環境にシステムを導入し,提案アルゴリズム単体での評価,および実機を用いてのシステム全体での評価を行うことで提案手法の有効性を検証する.実機実験における点検精度の評価方法に関しては,真値が既知のコンクリート供試体を用いた打診実験,およびプロの点検工の診断結果との比較により行う. (2)セミナーおよび学会活動への参加:画像処理,パターン認識,ロボット関連分野などのセミナーに参加し,最先端の技術についての情報収集を行い知見を深める.同時に,研究開発した環境認識・診断システムについての論文,および実験による評価結果などを国内および海外の関連学術会議で発表する. (3)博士論文の執筆:本年度は,博士課程の最終年度であり,平成27年度後期(2016年3月まで)に,平成26年度および平成27年度の成果を博士論文としてまとめ上げる.
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