2014 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化時代のインド・イギリスにおけるカーストとダリト運動の質的調査研究
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14J09056
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
鈴木 真弥 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | インド / イギリス / カースト / 「不可触民」 / 地域研究 / 社会学 / グローバリゼーション / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、①日印英での文献資料収集、②印英での現地調査、③国内の学会・研究会、国際会議での研究報告、④日本語による論文執筆と出版、④博士論文の出版準備、さらに市民講座の実施など、多岐にわたる研究活動に取り組んだ。 主題(1)1990年代以降のダリト運動の検討、主題(2)清掃カースト(バールミーキ)の事例分析について、日本語・英語文献を中心に精読し、2015年2月下旬から2週間のインド調査時期にヒンディー語資料を含む最新の文献を収集した。デリー市内のダリト研究所、プネー大学、デリー所在の自治体機関において文献調査に加え、同機関関係者と調査に関する集中討議を行った。また、博士論文の成果から3つ論文を出版した。 主題(3)経済自由化がダリトの人びとに与える影響の検証について、デリーのバールミーキに関する世帯調査の結果を、カーストと職業のつながりから分析し、論文を出版した。バールミーキの清掃部門への高い集中と女性労働者のインフォーマルセクターへの従事が男性より高いこと、臨時雇いが多いという雇用の不安定化が明らかにされた。他のダリトの職業として皮革業があるが、清掃業と比較した場合、対照的な状況が確認される。チャマールは、皮なめし産業の衰退にともない、生業からの離脱をほぼ達成している。デリーの急速な都市化と清掃労働の需要の高まりにより、清掃業からの離脱は近年いっそう困難にみえる。 主題(4)グローバル化がインド国内外のダリト運動、人びとのカースト意識に与えた変化の分析にかんして、国際的な反カースト運動に着目し、バールミーキの移民も多く居住しているイギリスにも視野を広げ、カースト的ネットワークの形成、移民先の生活調査、カースト団体の活動分析を行なった。8月上旬から約3週間、ロンドン近郊のサウソール、マンチェスター、バーミンガム、コヴェントリー、ウォルヴァーハンプトンで予備調査を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で示した主題(1)1990年代以降のダリト運動の概観と特徴、主題(4)グローバル化がインド国内外のダリト運動に与える影響について、予定通り資料収集とフィールド調査を行い、分析に着手した。主題(2)ダリト運動の「多様化」個別化」の傾向について、3つの論文を出版した。また、二年次、三年次で本格的に行う予定のイギリス調査についても部分的に予備調査を行い、現地のインフォーマントと研究者に関する情報収集および今後の見通しを得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度にあたる本年度は、予備調査のほか、国際学会や国内の研究会における発表も積極的に取り組んだ。さらに、研究成果を還元する取り組みとして、昨年度に続いて市民講座を企画・開催し、好評を得た。 今後は、イギリスのダリト移民に関する初年度の調査をまとめ、インド国内外で生じている反カースト運動の変容や運動家のネットワーク形成の研究を深化させる。同時に、積極的な研究成果の出版を中心に進めていきたい。
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Research Products
(8 results)