2015 Fiscal Year Annual Research Report
配向性炭酸カルシウムナノ粒子を応用したストロンチウム回収剤の創製
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14J09064
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
中村 仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端的共通技術部門先端材料プロセスユニット, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 炭酸カルシウム / ストロンチウム / 水質浄化 / シロキサン / カルバメート / 海洋汚染水 |
Outline of Annual Research Achievements |
炭酸カルシウム粒子を応用した水溶液中からのSr種回収剤の作製と、その基礎となる科学を明らかにすることをめざし、シロキサン含有炭酸カルシウムナノ粒子の結晶相の制御と疑似海水からのSr種回収について検討した。 まず、アミノプロピルシランおよび水酸化カルシウムから炭酸ガス化合法により粒子を作製した。このときの仕込みSi/Ca比を0.2~0.4 mol ratioで増加させた。粒子をXRDおよびSEMにて評価した際、Si/Ca比が0.2ではバテライトの回折パターンを示す平均直径および厚みが4および0.7 μmの板状粒子、0.3および0.4ではいずれの炭酸カルシウムにも帰属されない回折パターンを示す、直径0.1μmの粒子からなる凝集体が見られた。これらの粒子のSi含有量はSi/Ca比の増加に伴い1.1~1.9 wt%へと増加した。各粒子のATR-FTIRスペクトルでは、全ての粒子でシロキサン骨格およびカルバメート基に由来するバンドが確認された。またSi/Ca比が0.3および0.4の粒子はアラゴナイトに近似した炭酸イオンの吸収バンドを示した。 次に粒子を疑似海水中に浸漬し、ICP-OESにより[Si], [Ca], [Sr]および[Mg]濃度を評価した。浸漬30 min後の時点では、全試料で粒子中のシロキサンの加水分解に伴う[Si]濃度の上昇と、粒子への吸着による[Ca]濃度の顕著な減少が確認された。12 hまで浸漬した際、Si/Ca=0.2および0.3の粒子の結晶相および浸漬溶液中のイオン濃度に顕著な変化は見られなかった。一方Si/Ca=0.4の粒子では浸漬6~9 hの期間にてアラゴナイトへの溶解・再析出が生じ、浸漬12 h後にはSr濃度が検出限度(0.01 mg/L)以下まで減少することを見出した。さらに浸漬前後での溶液中の[Mg]濃度に顕著な差は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究推進方策であった、粒子中のカルバメートシロキサンの含有量向上手法、ならびに疑似海水中でのSr種の回収挙動に関して知見が得られた。またその中から高[Mg]濃度環境下で微量なSr種を効率的に回収する手法に関する新たな知見を得た。これらを踏まえ、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下の項目について検討を行う。 ◆Si/Ca仕込み比が0.4mol ratio以上の条件下でカルバメート種含有炭酸カルシウム粒子を合成し、Sr回収効率の向上に関して検討する。 ◆電気泳動堆積法による粒子の基板等への堆積についても検討する。 ◆ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのカチオン配位サイトを持つ高分子とのコンポジット化を行い、不織布形状等の多孔質体に成形することを試みる。 ◆Sr種回収ユニットのテストピースを作製し、擬似海水中でのSr種回収の模擬試験を行う。
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Research Products
(9 results)