2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J09110
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小宅 教文 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 熱伝導 / 界面熱コンダクタンス / フォノン輸送 / 熱物性測定 / サーモリフレクタンス法 |
Outline of Annual Research Achievements |
エネルギーの有効利用に向けて,温度差を電気に直接変換する熱電変換素子への期待が高まっている.その素子を普及させる上で,素子の高効率化は必要不可欠である.そのためには高い電気伝導率を持ち,低い熱伝導率を持つ材料が必要であり,難しい課題であった.近年になって,ナノサイズの粒子を焼結したナノ構造を用いて素子の熱伝導率を低減させて,熱電変換素子の効率が向上している.これは物体のスケールが熱キャリアであるフォノンより小さくなった場合に熱伝導率が減少するサイズ効果を利用したものである.このサイズと熱伝導率の関係の正確な測定は熱電変換素子の効率向上に必要不可欠であるが,そのスケールの小ささから測定が困難である.そこで本研究ではナノスケールの熱輸送測定によく使用されている時間領域サーモリフレクタンス法を発展させて幅広い材料に適用可能なフォノン平均自由行程の測定法を確立し,熱電変換素子に用いられている材料を測定することを目的とする. 本年度は,金ナノ粒子を用いたフォノン平均自由行程を完成させ,査読付き学術誌に成果が掲載される等,期待通り研究が進展した.具体的には透明基板上に金ナノアイランドと呼ばれるナノ粒子を作成し,時間領域サーモリフレクタンス法を用いてその粒子を加熱・測温することでフォノン平均自由行程測定を可能にした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,金ナノ粒子を用いたフォノン平均自由行程を完成させ,査読付き学術誌であるApplied Physics Lettersに研究成果が掲載される等,概ね順調に研究活動が進展している.具体的には透明基板上に直径20 nmから100 nm程度の直径で基板に接地する金ナノアイランドと呼ばれるナノ粒子を作成し,その粒子を加熱・測温することで従来の測定領域(60 nm)より小さな測定領域を実現し,ナノスケールにおける熱伝導率の振る舞いを明らかにした.加えて,熱伝導率測定装置である時間領域サーモリフレクタンス装置にクライオスタットを導入し,低温測定の下地を築いた. 本手法では金ナノアイランドのサイズが揃っていないために,フォノン平均自由行程測定の精度が高いとはいえない.そのためにサイズが揃った粒子での測定が必要とされる.また,現在の手法では透明基板の測定のみが可能である.実際の熱電変換材料は不透明材料が多いため,現在の手法を発展させて不透明材料の測定も可能にする必要が有るといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に続いて,プラズモン共鳴を応用した微小領域の効率的な加熱・温度測定についての研究を進める.昨年度は金薄膜をアニールするのみで得られる金ナノアイランドと呼ばれる微粒子の熱測定を行うことで,透明基板のフォノン平均自由行程測定を可能にした.この手法は非常に簡便であるが粒子サイズがあまり揃っていないために精度の高い測定が難しいといった問題点を有する.そこで今年度は,サイズが揃った粒子を用いて高精度フォノン平均自由行程測定の実現を試みる.はじめに,どのような形状の粒子が適しているかを選定し,その粒子を基板上に一定の密度で配置する条件を考察する.それが実現した後に,時間領域サーモリフレクタンス法を用いて粒子の熱緩和を測定し,測定される基板の熱伝導率が粒子のサイズにどのような依存性を持つか考察し,フォノン平均自由行程を高精度で推定する. 上記のフォノン平均自由行程測定に加えて,本手法を液体材料にも発展させて固体と液体の界面での熱輸送の解明も試みる. また,随時研究結果を国内,国際会議で報告する.
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Research Products
(3 results)