2014 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ嗅覚記憶を形成する新奇神経ネットワークの単一細胞レベルでの解析
Project/Area Number |
14J09111
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上岡 雄太郎 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶 / 行動 / 神経回路 / 可塑性 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
生物が特定の外界の刺激を学習し記憶するためにはその刺激に対応した特定の回路の入出力関係が変化している可能性がある。本研究の目標はそのような記憶形成を担う脳内ネットワークを単一細胞レベルの解像度で同定し、その機能を解明することである。記憶形成に関わる転写因子のレポーターを持つトランスジェニックフライを用い、嗅覚記憶に関わる神経を探索した。レポーター陽性の神経を候補神経として網羅的に機能阻害したところ、報酬学習・嫌悪学習ともに記憶インデックスの低下が見られた。特に嫌悪学習に関しては短期記憶において特異的に記憶インデックスの低下が見られた。つまり、短期記憶を特異的に亢進するような神経を候補神経群の中に捉えている可能性がある。嫌悪学習に於いてこのような短期記憶に特異的な神経が報告されたことは従来にないため、この記憶を重点的に調べた。 嫌悪記憶の形成に必要な神経としてドーパミン作動性神経が知られているため、ドーパミン作動性の神経で機能を回復させ、ドーパミン作動性でない候補神経群を網羅的に機能阻害したところ、嫌悪・短期記憶の低下は回復されなかった。このことから嫌悪・短期記憶に特異的な神経はドーパミン作動性神経でないことが分かった。また、アセチルコリン作動性神経での機能阻害を回復したところ、嫌悪・短期記憶は正常となった。 以上から、アセチルコリン作動性のレポーター陽性神経において嫌悪・短期記憶に特異的に関わる神経が存在する可能性が示唆された。 本研究によって、記憶形成・保持といった神経機能の経時変化がどのようにして生じるか神経回路レベルで明らかになると期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レポーター陽性神経を網羅的に機能阻害することによって、短期記憶特異的な阻害という従来にない表現型が得られた。また、この原因となっている神経の候補を大まかに絞ることが出来た。しかし、候補神経の数が想定以上に多く、少数の神経にまで候補を絞るには至っていない。先行研究を参照し全自動行動実験器具の作成に成功したため、今後は効率的に神経を探索することが可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した全自動行動実験器具を用いて、引き続き神経のスクリーニングを行う。この際、候補として嗅覚可塑性に関わると言われるキノコ体と接続するような神経から調べる予定である。記憶に関わる神経が同定された後、神経機能の詳細を調べるためにライブイメージングを行う。カルシウムインジケーター等を指標として学習前後で新奇神経の匂い応答の変化などを見ることによって新奇神経が嗅覚記憶へどのように寄与しているか特定する。
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Research Products
(3 results)