2015 Fiscal Year Annual Research Report
キラルな回転やねじれ運動の自在制御が可能な二重らせんヘリケートの創製と応用
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14J09119
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山本 慎也 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 二重らせん / ヘリケート / スピロボレート / 分子認識 / 不斉識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、中央にポルフィリン部位を有する二重らせん型ホウ素ヘリケート1X2 (X = NaまたはTBA(テトラブチルアンモニウム))の合成に成功するとともに、そのらせん空孔内に電子欠乏型芳香族分子(ナフタレンテトラカルボン酸無水物(NTCDA))を、ヘリケートの構造変化を伴いながら、極めて強固に包接できることもX線結晶構造解析等の各種測定によって明らかにしている。また、スピロボレートで架橋されたヘリケート1Na2は比較的安定であるため、光学活性なアンモニウム塩を用いたジアステレオマー塩法により光学分割可能であり、さらに、光学活性なアンモニウムをアキラルなTBAに置き換えることで、鏡像体過剰率(ee)が99%以上の高い光学純度で左右どちらか一方向巻きの1TBA2を得ることにも成功している。本年度は、1X2の様々なゲスト分子に対する分子認識能、不斉識別能についての検討に合わせて、キラルな分子の包接を利用したデラセミ化反応についても詳細に検討を行った。その結果、一方向巻きの1TBA2がラセミ体のゲスト分子を不斉選択的に包接することを明らかとするとともに、その選択性が溶媒や温度によって大きく依存し、ジアステレオマー過剰率が94%まで向上することも見出した。さらに、特定の条件下、光学活性なゲスト分子を包接したラセミ体の1Na2のデラセミ化反応が進行することも明らかとし、最高72%のらせん方向過剰率で光学活性な1Na2を得ることに成功した。以上の結果は、今後、ヘリケートを用いた不斉識別材料や不斉触媒への応用のための重要な指針となると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、二重らせん型ホウ素ヘリケートのゲスト分子に対する包接挙動について検討を行い、ゲスト分子の電子状態や立体構造の違いによる包接能への影響および不斉識別能について明らかにした。また、光学活性なゲスト分子を利用して、ヘリケートのデラセミ化反応が進行することも見出した。以上の成果は、論文として投稿準備中であることから判断して、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られたヘリケートの分子包接能についての結果をもとに、触媒部位を導入したゲスト分子を設計・合成し、ヘリケートに包接させることで、ゲスト分子単独では発現しない触媒活性や不斉選択性を発現する超分子触媒の開発を目指す。また、金属ポルフィリンを用いた新規ヘリケートを合成し、らせん空孔内を反応場とすることによる特異な触媒能について検討を行う。
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Research Products
(1 results)