2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J09159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 晃博 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | カーボンナノチューブ / 単一光子 / 励起子 / フォトルミネッセンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では架橋カーボンナノチューブにおける励起子拡散の影響を評価するため、発光強度の架橋幅依存性について一次元ランダムウォーク理論を用いてモデル化し、それに基づいてこれまでに収集した実験データの解析を行った。その結果、複数のカイラリティのナノチューブにおける励起子拡散長を得ることができた。また、ナノチューブの発光強度における励起光強度依存性についてモンテカルロシミュレーションの結果と比較することで、励起子の生成・消滅レートを定量的に明らかにすることが可能となり、複数のカイラリティのナノチューブにおける吸収断面積及び発光量子効率を得た。さらにこの解析を通じて励起子‐励起子消滅のレートが励起子密度の3乗に比例して上昇することを発見し、その性質を一次元ランダムウォーク理論によって説明することができた。 以上の研究成果について、6月にロサンゼルスで行われた学会(NT14及びそのサテライトシンポジウムであるMSIN14)、9月に札幌で行われた応用物理学会秋季学術講演会、及び2月に東京で行われたフラーレン・ナノチューブ・グラフェン 総合シンポジウムで発表を行った。また、この成果を論文にまとめ12月にPhysical Review B誌に投稿し、3月に掲載された。 上に述べたデータ解析及び論文執筆の作業が終了した後、カーボンナノチューブにおける励起子‐励起子消滅を利用した単一光子生成の実証実験へ向け、測定試料の作製及び光学測定システムの構築を行った。光学測定システムについては、光子相関の測定を実現するためのセットアップの設計、及び新たに必要となる光学素子や装置の調達が完了し、システムの構築及び最適化を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーボンナノチューブを用いた単一光子源の開発へ向けて、最も大事なプロセスと考えられる励起子の拡散現象について、基本的な性質を詳細に明らかにすることができた。特に、拡散長がカイラリティによって大きく異なることが初めて明らかとなり、このため単一光子デバイスの作製においてカイラリティを選別する必要があることが判明した。また、拡散に伴う励起子‐励起子消滅過程についても先行研究では述べられていなかった性質について理解することができ、それを理論的にモデル化することに成功した。これにより単一光子生成のプロセスをシミュレーションすることが可能となり、デバイス作製に向けての指針が得られた。一方で、上に述べた励起子拡散に関する解析から想定以上の結果が得られたために、作業に時間がかかり、予定していた単一光子測定システムの立ち上げは完了していない状況である。システムに必要な装置や部品は既に手配されているため、間もなく単一光子測定を開始できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
カーボンナノチューブを用いた単一光子生成デバイスの実現へ向けて、引き続き光学測定システムの構築を行い、完成し次第光子相関測定を始める。また、昨年までの経験から、夏の湿度が高い環境下ではカーボンナノチューブの劣化が早いことが明らかとなっているため、測定と並行して湿度対策についても取り組む予定である。具体的には、窒素雰囲気下で測定を行うためのサンプルケースの試作、及び一度劣化したナノチューブを真空中でアニーリングすることで回復させる方法を試す予定である。 単一光子の生成が確認できた後は、チップ上に電極を配置し、架橋ナノチューブFET構造を作製して光子生成の電界制御の実証を行う予定である。
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Research Products
(5 results)