2015 Fiscal Year Annual Research Report
シロイヌナズナ変異体syp22-1の抑圧変異体の解析によるARA6の機能の究明
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14J09222
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹元 廣大 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 膜交通 / 葉緑体 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、syp22-1の優性抑圧変異vas6Dの原因遺伝子VAS6について、抑圧様式とそれに関わる経路の解析を行った。 昨年度の結果から、vas6変異は完全優性ではないのではないかと考え、VAS6の機能欠失アリルvas6-1を用いてvas6+/D及びvas6D/-1の葉の縮れ、花茎の伸長遅延、花成遅延の表現型について抑圧の有無を調べた。その結果、花成遅延については前者では抑圧がみられず、後者ではみられる一方、葉の縮れ、花茎の伸長の表現型については、vas6Dホモに比べてどちらも弱い抑圧活性を示すという結果が得られた。これらのことから、vas6Dは花成遅延については機能欠質アリルで劣性、葉の縮れと花茎の伸長の表現型については不完全優性の変異であると考えている。 シロイヌナズナにはVAS6を含めて7つのパラログが存在しており、まだ解析の行われていない3つについてシロイヌナズナ培養細胞の一過的発現系を用いて細胞内局在を観察した。3つのうち1つはVAS6と同様に色素体とドット状の構造に、残る2つはミトコンドリアに局在していた。そこでVAS6と同様の局在を示したパラログのT-DNA挿入変異とvas6-1の二重変異体を作製したところ、致死になることが明らかになった。このことから、VAS6には機能的パラログが1つ存在し、この冗長性が葉と花茎の表現型について、vas6Dを不完全優性にしていることが示唆された 先行研究からsyp22-1背景でのFLCの発現の上昇が花成遅延の原因であることが明らかになっている。そこで、qRT-PCRでsyp22-1 vas6Dとsyp22-1 vas6-1のFLCの発現量を測定した。どちらの植物体でもFLCの発現量の抑圧は見られず、VAS6の機能欠失はFLCよりも下流の部分に関わるか、FLCを経由しない経路を介して花成を促進しているかの2つの可能性を考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝学的な解析については当初の想定以上の進展があり、vas6Dの抑圧様式についてより詳細に明らかにすることができた。また、花成の表現型についてVAS6が関わる経路の解析に着手し、少なくともFLCの上流ではないことを明らかにした。VAS6のパラログについて細胞内局在を解析することで、VAS6と同様の局在を示すホモログが1つ存在することが明らかになり、二重変異体の解析からそれがVAS6と機能的にホモログであることを示すことができた。さらに昨年度からの課題であったシロイヌナズナ植物体でのVAS6の局在の観察だが、薬剤誘導性プロモーターでタグ付きタンパクの発現を駆動する形質転換体を作製し、その観察準備を進めていることから、おおむね順調な達成度と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
・野生型、ara6-1、ara6-2背景でVAS6-GFPを発現する植物を観察し、VAS6-GFPの局在を解析する。 ・VAS6の基質を網羅的に探索するため、VAS6-GFPを発現する植物体から抗GFP抗体を用いた免疫沈降を行い、免疫沈降物の質量分析解析を行う。 ・質量分析解析で得られたVAS6の基質候補について、yeast-two hybrid法、プルダウン法などによってVAS6との物理的相互作用の確認を進める。 ・VAS6の基質について、T-DNA挿入変異体解析とsyp22-1との二重変異体を作成し、遺伝的相互作用の検証を行う。 ・VAS6の局在化に関わるタンパク質の候補について、VAS6との結合解析、共局在解析、変異体を用いた遺伝学的解析等により、VAS6の輸送との関連を明らかにする。
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Research Products
(3 results)