2015 Fiscal Year Annual Research Report
全球高解像度非静力学モデルを用いた物質境界と混合の数理的研究
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14J09257
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 亮輔 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | PANSYレーダー / 非静力学大気モデル / 中間圏 / 慣性重力波 / 極域大気 |
Outline of Annual Research Achievements |
南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)は対流圏から中間圏までの3次元風速の鉛直プロファイルを高い高度・時間分解能かつ高精度で連続観測することができる南極最大の大気レーダーである。2015年3月16日から24日にかけて、PANSYレーダーのフルシステムによる観測が初めて行われた。この期間中間圏において周期が慣性周期に近い顕著な波型擾乱が観測された。このような擾乱は過去研究においても観測され注目を集めてきたが、伝播や発生メカニズムまで踏み込んだ研究はほとんどなかった。このような大振幅波動の力学を理解することは、大気全球循環の描像の理解に繋がるものである。今年度はこれらの波状擾乱の空間構造や力学特性、発生源について調べるため、この期間を対象として高度領域を中間圏まで拡張した非静力学正二十面体モデルNICAMを用いて対流圏から中間圏の大気擾乱の再現実験を行った。 詳しい解析の結果、この波状擾乱は水平波長2000 km程度と非常に大きな慣性重力波であり、対流圏界面付近及び中間圏極渦の大規模な流れの自発的調節過程によって発生し昭和基地付近に到達したものと突き止めることが出来た。この研究成果を関連する国内学会および国際学会で発表した。このうち地球電磁気・地球惑星圏学会では学生発表賞を受賞した。また、高解像度数値モデルを用いたPANSYレーダー観測データとの長期比較解析的研究に備えて、数値モデルで用いる新たな水平格子作成法を考案した。この手法に関する論文をまとめ、2015年12月に日本気象学会の国際誌に投稿した(条件付受理)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高解像度数値モデルを用いたPANSYレーダー観測データとの長期比較解析的研究に備えて、数値モデルで用いる新たな水平格子作成法を考案した。この手法は極域大気を従来の方法よりも高解像度かつ高計算効率でシミュレーションすることを可能とするものである。この手法に関する論文をまとめ、2015年12月に日本気象学会の国際誌に投稿した(条件付受理)。これにより、計画していた大気内部で構造を持った物質混合プロセスの理解及び、成層圏及び中間圏での全球的な物質循環の理解のための準備が整ったことになる。この手法を利用した設定に基づき、南極中間圏でPANSYレーダーによって観測された大振幅擾乱について再現実験を行った。詳細な比較解析の結果、このような大規模擾乱の伝播・発生メカニズムを明らかにすることが出来た。このような研究は当初計画していた研究内容(c)にあたるものであり、研究は順調に推移しているものと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は当初の研究計画(a),(b)にある極域対流圏界面付近の物質混合プロセスの理解のため、大気レーダーと数値モデルを組み合わせた研究を行う予定である。PANSYレーダーの全群観測は今年度から来年度にかけて南極昭和基地で順調に進行中であり、数値モデルの開発も今年度である程度達成できた。これらを用いて大気の微細な混合プロセスについて研究を行っていく予定である。
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Research Products
(6 results)