2014 Fiscal Year Annual Research Report
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14J09259
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大川 幸男 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 対数的代数多様体 / カルチエ変換 / リーマンヒルベルト対応 / Stratified基本群 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はOgus-VologodskyおよびGros-Le Stum-Quiós等による高レベルの局所カルチエ変換を対数的代数多様体の場合に一般化すること、あるいはScheplerによる対数的局所カルチエ変換を高レベルの対数的微分作用素の場合に一般化することについて研究を進めた。証明の方針は先行研究と同様に高レベルの対数的微分作用素の層の分裂加群を構成することである。しかしながらGros-Le Stum-Quiósによる高レベルの局所カルチエ変換の証明は技術的であり、彼等の手法をそのまま対数的代数多様体の場合に拡張することは困難であった。研究代表者は分裂加群への微分作用を幾何学的に自然な方法で与えることでこの困難を克服し、高レベルの対数的局所カルチエ変換の証明に成功した。正標数のD加群の理論では、フロベニウス降下と呼ばれる圏同値が重要な役割を果たす。研究代表者はこのフロベニウス降下の理論と対数的局所カルチエ変換カルチエ変換との間に期待すべき整合性が成り立つことを証明した。また研究代表者はこれまでに、大域的な場合の対数的カルチエ変換を得ていたが、今年度構成した局所的な対数的カルチエ変換を適切に張り合わせることで、大域的な対数的カルチエ変換を再構成できることを証明した。以上の成果を論文としてまとめ、論文雑誌に投稿した。 一方で研究実施計画に記載した対数的リーマンヒルベルト対応の研究も行った。Dos SantosおよびLars Kindler等によるStratified基本群に関する先行研究を、より一般の対数的代数多様体の場合に一般化することで、研究目標である対数的リーマンヒルベルト対応のひとつの形が定式化できるだろうというアイデアを得た。この期待を実際に実行するために、今年度は対数的代数多様体上に付随するクンマーエタール景上の対数的微分計算の一般論を整備した。またこの景上に適切な微分方程式のクラスを定義することを模索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高レベルの対数的局所カルチエ変換に関する研究に関しては、これは研究計画の約半分を占めているが、申請書に記載したすべての事項に完全な証明をつけることができた。また論文にまとめ論文雑誌に投稿することもできた。以上の理由から達成度はおおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
カルチエ変換に関する研究では、高次順像との整合性、コホモロジーの比較などが課題として残っている。これは当初の研究計画には盛り込まれていなかったものであるが、今年度様々な研究者との研究討論を通じその研究必要性を認識するに至った。今後これらの内容についても研究計画を拡大して研究を行うことは重要であると思われる。一方対数的リーマンヒルベルト対応についての研究は、研究計画書に記載したような導来圏を用いた定式化で研究を行うことはまだ困難な点が多い。そこで対応策として、研究実績の概要第2節に記載したStratified基本群の理論の対数化を目標とした研究をまず行いたい。これは当初の研究目標よりはある意味で弱いが、正標数における対数的リーマンヒルベルト対応と関連しており、より現実的な研究目標を与えていると考えられる。
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Research Products
(3 results)