2015 Fiscal Year Annual Research Report
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14J09336
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
赤石 れい 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 意思決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では様々な脳領域や計算処理によってなされている神経の機能について、統一的な理解の枠組みを目指して研究を行っている。この目的を成し遂げるため意思決定という行動の選択を行うための情報処理の枠組みに基づき研究を行った。新たな視点からの発見と理解を促すため、本研究では近年注目を集めだしたvicarious trial and error (VTE)という概念に着目し研究を進めている。 VTEという概念は、地図状の道の分岐点のような場所である一方の道を選択するかあるいはもう一方の道を選択するかで未来を想像して逡巡しているような行動またはその脳内表現を指している。近年になりRedish等によりこのVTEの方もげっ歯類の実験により、行動と神経活動の双方においてその存在が確認されてきている。意思決定をする際にこれから起こることを想像して考えを巡らせるというのは非常に直感的にも正しいように思われるが、ヒトを含めた霊長類の研究では今まであまり注目されてこなかった。今回の研究では行動の選択をしている際のサルの眼球運動を計測し、霊長類においてもVTEの概念に表されるような現象が起こっていることを証明することを目指した。 VTEの概念を基にした仮説では、サルの視線はまず情報刺激をみてから連合条件付けされている目標刺激をみると予想された。実際にこの課題を遂行中のサルの眼球運動を調べてみると、まず情報刺激をみてからすぐに連合条件付けされている目標刺激をみるような視線の動きが観察された。 この結果はげっ歯類で確認されてきたようなVTEと呼ばれる一連の出来事を想像して逡巡をしつつ選択を下すというような情報処理が存在することを初めて示唆した。この結果を論文として発表するため論文を投稿し査読を受けている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究は、意思決定の統合的神経メカニズムの解明をするという目的において重要なものであった。まずサルの眼球運動の実験とそのデータの解析においてvicarious trial and errorというげっ歯類の迷路課題からきた概念との関係に気づき、論文としてまとめあげたという意味で評価に価するものであると考える。しかし、vicarious trial and errorという概念は神経活動と伴ってこそその意義を最大限にその価値を示しうるものであり、その点で実験の進行が十分なスピードで行われなかったことは、反省すべきものであると考える。今後はこの概念の霊長類の実験系でのさらなる発展を期すため、適した脳領域の選定や、この概念に真に当てはまる実験系の開発などを行うことをさらなる努力を尽くしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の展開としては最初の研究ではできなかった面でげっ歯類のVTEとの比較を進めたい。具体的にはげっ歯類のVTEは実際の迷路空間を基にして行われるのに対し、今回報告した霊長類のVTEはより抽象的な連合された出来事の関係性を基にしている。このような実際の空間を対象にした情報処理と抽象的な連合空間を対象にした情報処理の間に、担当する脳領域の相同性を含めて類似性があることは知られているが、最後の一年では霊長類でもこのような実際の空間情報処理に近い形でVTEが行われていることをVirtual Reality技術などを活用して確認したい。これにより霊長類で独自に発達している意思決定の仕組みも明らかになることが期待される。
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Research Products
(4 results)