2014 Fiscal Year Annual Research Report
睡眠時リハーサルによる手続き学習定着の神経機構:鳴禽類の歌行動をモデルとした研究
Project/Area Number |
14J09362
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橘 亮輔 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 発声学習 / 強化学習 / 睡眠 / 実時間信号処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠時の脳内リハーサルが学習の定着に貢献する神経メカニズムを明らかにするために、ジュウシマツの歌学習を対象として、睡眠時の神経活動の操作がどのような影響を及ぼすかを調べている。人間を含めた様々な動物において、学習中と同じ神経活動パターンが睡眠中にもしばしば観測される。この睡眠時の神経活動を睡眠時リハーサル(あるいはリプレイ)といい、学習の定着に貢献すると考えられている。歌を学習する鳥である鳴禽類でも、歌を制御する神経核において睡眠時リハーサルが観測される。彼らの歌は様々な短い音要素(シラブル)で構成されており、睡眠時リハーサルの各箇所は各シラブルと対応している。本研究では、睡眠時の神経活動にシラブル特異的に介入することで、歌の学習の定着における睡眠時リハーサルの寄与を調べる。本年度は次の3点に注力した。(1)神経活動記録系の構築:電極の試作、神経活動記録機器と信号処理機器のセットアップをおこなった。信号処理アルゴリズムを開発するために、別の実験で得た多点電極による計測データを用いて、歌聴取中の神経活動から特定シラブルを検出するアルゴリズムを考案した。(2)行動実験:外部からの人為的な強化によって、歌の一部を再学習させる実験をおこなった。これは罰刺激(ノイズ音)を避けるようにして歌が徐々に変化するという学習行動を利用したものである。結果、特定シラブルの時間制御に局所的な学習を引き起せること、学習速度や上限がバラツキの大きさに関連があることが分かった。(3)数理モデル:当初の計画にはない新たな展開として、行動実験で得られたデータから、学習の数理モデルの構築を開始した。精密な数理モデルが得られれば学習の神経メカニズムを推定でき、睡眠中の学習の定着についても大きな示唆が得られることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経活動記録および神経活動を解析する信号処理系のセットアップ、また信号処理アルゴリズムの開発が計画通り達成された。特に、多点電極により計測した歌関連の神経活動の多次元データから、歌に含まれる個々の音要素に対応する時点を推測する信号処理手法を考案できたことは、研究計画を完遂するにあたって大きな進捗であった。加えて、行動実験の結果、学習速度や上限などの行動パラメタが得られつつある。これは学習の神経メカニズムを数理的な側面から検討する上で重要な知見である。一方、当初予定していた神経活動の薬理的操作は、再検討の結果、上記の事柄に注力した方が全体として効率よく進むであろうと判断し計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、本年度の成果を基にして、神経活動記録とその実時間信号処理による操作介入実験を開始する。また、研究目的を一部共有する海外の研究者との共同研究を計画している。互いの技術を補い合いつつ研究をさらに発展させることを目的として、海外に長期滞在する予定で計画立案をおこなっている。このような国際的な研究協力体制のもと、さらなる研究の発展を目指す。
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Research Products
(6 results)