2015 Fiscal Year Annual Research Report
超微量放射性炭素測定法開発と微量金属測定による高時間分解能海洋環境復元
Project/Area Number |
14J09489
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平林 頌子 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 放射性炭素濃度測定 / U/Th年代測定 / ローカルリザーバー効果 / 海洋環境復元 |
Outline of Annual Research Achievements |
放射性炭素(14C)は、海水動態理解に有効な化学トレーサーとして使用される。1950年以降の核実験由来のBomb-14Cをトレーサーとすれば、高時間分解能での海洋循環を捉えることができる。1950年以前の核実験の影響のない条件での海水中の14C濃度は海域ごとに異なることが知られている(海洋リザーバー効果の海域差; ΔR)。ΔRは地域的な海洋変化の影響を強く受けるため、海洋循環の指標として使用できる。サンゴは炭酸塩骨格を持ち、その骨格は海水中の14Cを取り込むため、時間に連続的な14Cレコーダーとして良い試料である。 平成27年度の研究では、昨年度確立した高時間解像度放射性炭素濃度測定法を、黒潮流域で採取された現生サンゴに適応してサンゴ骨格中の放射性炭素濃度測定を行い、海洋環境復元を開始した。その結果、1950年以降の期間については、黒潮起源の海域であるフィリピンからその下流にあたる喜界島までの海域では、Δ14C値はほぼ一様な値となった。一方で1950年以前の期間については、先行研究で報告されていた1900年前後のΔ14Cと本研究で測定した1940年代とで値が大きく異なることが明らかになり、西太平洋では海水中14C濃度が約40年という短期間で変動していることが示唆された。 さらに平成27年度は、黒潮流域に位置するフィリピンおよび喜界島から採取された中期完新世の化石サンゴを用いて、8000年前から4000年前のΔRの変化の復元を開始した。ΔRは年代によって一定ではなく、海洋循環の影響を受けて変化していることが近年明らかになってきている。中期完新世から現在にかけて、アジアモンスーンが弱化してきていたことが知られており、東シナ海での海流循環も影響を受けていることが考えられる。ΔRは、サンゴ骨格中の14C年代とU/Th年代の差から求めることができる。14C年代は東京大学大気海洋研究所にて、U/Th年代はオーストラリア国立大学にて測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では放射性炭素濃度測定を用いて過去60年間の黒潮流域の海洋環境復元を行う予定であったが、平成27年度からは放射性炭素濃度測定に加えU/Th年代測定も行い、過去数千年まで遡って海洋環境復元を試みるように研究計画の拡大を行った。U/Th年代測定のために、この分析法で世界をリードするオーストラリア国立大学に滞在し、分析法の取得も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、オーストラリア国立大学にてU/Th年代測定を行い、本研究について議論を進める予定である。さらに、平成27年度の研究成果について学会で発表し、国際誌に論文を投稿する予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] サンゴの生物鉱化作用と古環境復元2015
Author(s)
横山 祐典, ベル 智子, 平林 頌子, 宮入 陽介, 窪田 薫, 関 有沙, 井口 亮, 鈴木 淳
Organizer
2015年度地球惑星科学連合大会
Place of Presentation
幕張メッセ, 千葉
Year and Date
2015-05-27