2014 Fiscal Year Annual Research Report
低酸素環境でのトレーニングを利用した効果的な健康増進プログラムの作成
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14J09537
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森嶋 琢真 立命館大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 低酸素環境での運動 / 糖利用の亢進 / 過体重の男性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本テーマの最終目的は、低酸素環境でのトレーニングを取り入れた効果的な健康増進プログラムを作成することである。この目的に対して、当該年度は、低酸素環境での運動に伴う食後血糖値やエネルギー代謝の変化を経時的に検討することを目的とした。この研究の実施によって、低酸素環境でのトレーニングによる糖代謝の改善効果を説明する要因を明らかにすることまでがエンドポイントであった。 過体重の男性8名を対象に、1.通常酸素環境(酸素濃度20.9%)で安静にする条件、2.通常酸素環境で運動する条件、3.低酸素環境(酸素濃度15.0%)で安静にする条件、4.低酸素環境で運動する条件からなる4条件を設け、異なる日に実施した。実験は朝8時から夕方15:30までの7.5時間にわたって行われた。安静の条件では、各酸素環境における7.5時間の安静中に、1食800kcal相当の食事を3回にわたって摂取した。これに対して、運動の条件では、各食事の直前に、各酸素環境で測定した最大酸素摂取量の60%に相当する強度での30分間のペダリング運動を行った。測定中には、採血および呼気ガス採取を行い、内分泌応答やエネルギー代謝の変化を検討した。その結果、食後における血糖値やインスリン濃度には、4条件の間に有意な差は認められなかった。しかし、低酸素環境で運動した条件では、通常酸素環境で運動した条件に比較して、運動中および運動後における糖利用の相対的貢献度が有意に高値を示した。上述の結果は、低酸素環境での運動は通常酸素環境での運動と比較して、糖利用を一日を通して亢進させることを示すものである。したがって、低酸素環境でのトレーニングによる糖代謝の改善効果を説明する要因には、低酸素環境での運動中および運動後における一過性の糖利用の亢進が関与している可能性がある。なお、この研究結果はPLOS ONEに原著論文として掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、低酸素環境下での一過性の運動や安静に伴う代謝・内分泌動態を検討するための実験に着手した。結果として、低酸素環境下で運動を行うことで、1日を通して糖代謝が亢進することを見出した。この結果は、長期にわたる低酸素環境下でのトレーニングに伴うインスリン感受性の改善の要因を考える上でも重要な基礎的資料となるものである。当該研究の結果を国内外の学会で研究発表したことに加えて、原著論文として国際誌(PLOS ONE)に掲載された。また、平成27年3月には博士学位(スポーツ健康科学)を授与された。 以上の諸点から、平成26年度の研究進捗には期待以上の成果があったと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究により、低酸素環境でのトレーニングによる糖代謝の改善効果の原因を捉えることができた。現在は上記の研究結果から、効果的な健康増進プログラム作成のため、詳細な運動方法を検討している。
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Research Products
(11 results)