2014 Fiscal Year Annual Research Report
免疫細胞による自己・非自己識別機構の数理・情報論的解明
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14J09545
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶田 真司 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 数理モデル / 免疫細胞 / 分子識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は免疫細胞による特異・非特異分子識別の理論モデルの構築、そして構築したモデルの数理的メカニズムの解明に取り組んだ。
まず決定論的モデルによるアプローチから、1個の免疫細胞が特異・非特異分子を識別する理論モデルを構築した。免疫細胞は抗原分子が類似していても、免疫細胞側レセプターとの親和性のわずかな違いを化学反応系で増幅することで識別していると考えられている。そこで本研究では微小な親和性の違いを増幅する理論モデルを構築した。このモデルは免疫細胞による分子識別で重要とされる3つの特性を満たす。またその理論モデルの振る舞いを数理的に解析し、そのモデルが3特性を同時に満たす理由を明らかにした。さらに4つ目の特性として、高濃度の非特異抗原に対して寛容な特性をもつように理論モデルを改良し、そのモデルの数理的メカニズムを解析した。これらの結果は、JSMB/SMB2014で発表され、現在論文投稿準備中である。また本研究を行うにあたって免疫分子識別現象の実験・理論研究を広く調査し、その結果をBIOPHYSICS誌に総説論文として発表した。
加えて、免疫細胞の持つ反応ノイズ下での正確な分子識別メカニズムを解明するため、確率モデルからアプローチする準備研究も行っている。すでに確率モデルの構築と数値実験によるノイズの識別精度への影響を精査し、現在、この数値実験の結果を説明するための理論構築に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は免疫細胞による自己・非自己識別現象の解明に向け、主に決定論的モデルからのアプローチによる研究に取り組んだ。 免疫細胞による自己・非自己識別は、細胞による類似した自己・非自己由来分子の識別現象と考えられている。そのためこの現象は免疫細胞側の受容体と抗原との反応特異性によって理解できると考えられ、先行研究でも特異性を再現するモデルが提案されてきた。しかし近年のバイオイメージング技術の発展で1細胞応答の定量測定が可能になったことで、免疫識別現象には特異性を含め4つの特性があることが明らかになった。そこでそれらの特性を満たす理論モデルの構築、その数理的メカニズムの解明が期待されている。 本年度はまず特異性を含む3つの特性を再現する新規理論モデルの構築、その数理解析を通じたメカニズムの解明を行った。現在その結果を論文にまとめている。次にその理論モデルを改良することで、第4の特性も再現する理論モデルを構築し、その数理解析を行った。この結果も論文執筆中である。さらにこれらの研究を行なうにあたって免疫識別の実験と理論の研究を広く調査し、その結果を総説論文としてBIOPHYSICS誌にて発表した。加えて、免疫細胞が反応ノイズ下で正確に分子識別するメカニズムを明らかにするため、確率論的モデルの構築とその理論解析にも取り掛かっている。以上より研究は期待通り進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進行しており、今後も計画通り研究を進める予定である。決定論モデルに基づくアプローチではすでに2つの理論モデルの構築と数理解析を終えており、早い段階で論文投稿を行なう。また確率モデルに基づくアプローチでは、これまでに数理モデルの構築とシミュレーションによる解析を行った。その結果、確率・統計推定理論との対応付けが可能だと明らかになったため、今後は構築したモデルのシミュレーションに加え、理論的な解析も進めていく。
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Research Products
(4 results)