2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J09657
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松永 優子 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 人神 / 霊魂観 / 死生観 / 祭祀 |
Outline of Annual Research Achievements |
「人神・慰霊の祭祀とその形成―記念・記憶の歴史」という研究テーマのもと、平成26年度は以下の通り研究を実施した。まず、これまでの研究では主に近世における人神祭祀に焦点を当て、地域における義人の祭祀や藩祖祭祀などさまざまな人神祭祀の形態について考察してきたが、今年度は近世の人神祭祀の問題に関する考察をさらに深化させ、特に、世俗化が進んだとされる近世に、なぜそれ以前の時代に類を見ないほどさまざまな人びとが神として祀られる現象が可能になったのか、また、学者達はそのような時代において、人間の位置付けや人の霊魂、また祭祀についてどのように考え、立論したのか、という問題に関心を絞って研究を進めた。そしてこのような、近世における人神祭祀の背景となる思想状況をより明確にするために、近世の仏教唱導で用いられた説話や、人神や死後の霊魂に関わる当該期の学者の議論、またさまざまな形態をとってなされた人神や慰霊の祭祀の事例について分析した。この分析の成果については、「近世の学者における『人』『神』『祭祀』をめぐる立論:新井白石・本居宣長・平田篤胤を中心に」と題した論文としてまとめ、学術雑誌『思想史研究』第19号に発表した。 また、今年度は従来の研究では取り扱うことの出来ていなかった、近世以降の人神・慰霊の祭祀にも視野を広げ、靖国神社における過去の戦争や英霊の扱いについて、また広島・長崎での原爆による民間の死者に関する記憶の仕方についての調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、従来の研究の延長線上にある近世の学者らによる霊魂観や死後祭祀に関する議論を改めて整理し、論文としてまとめることができたものの、研究計画全体として見た時に近世の人神祭祀の問題にのみ留まっており、近代以降との連続や断絶をどのように考えるかなどについて考察を進めることが出来なかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、第一に、研究の軸となる近世の人神祭祀の問題についてより考察を深めることが求められる。また第二に、本研究では近世に留まらず前後する時代の人神・慰霊の祭祀の形態やその背景となる思想のあり方を検討しつつも、近世の状況について、近代のあり方に引っ張られること無く、近世自体の状況を内在的に把握することを目指している。そのため近代以降の人神・慰霊の祭祀についても、近世との断絶面と連続面がどのように分布しているかに十分注意しつつ、近世との関連を分析し、その成果を発表していきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)