2014 Fiscal Year Annual Research Report
炭素五員環含有型抗生物質パクタマイシンの生合成機構解明
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14J09702
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
平山 茜 東京工業大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | パクタマイシン / ピリドキサール 5’-リン酸 / 3-アミノ安息香酸 / 3-デヒドロシキミ酸 / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
パクタマイシン生合成遺伝子クラスター中には機能未知の酵素遺伝子が複数存在している。そこで、推定生合成経路を見直し、炭素五員環形成に直接関与し得る酵素と、炭素環形成の前に働き得る酵素を選出した。そして、これらの酵素の機能をin vitroで調べるために、大腸菌による異種発現を試みた。種々の条件検討の結果、これらの酵素を大腸菌にて発現させ、ほぼ単一の酵素として精製することができ、in vitroでの反応検討のための土台を整えることができた。 また、これまでに、パクタマイシン生合成遺伝子クラスター中にコードされるピリドキサール5’-リン酸 (PLP) 依存型酵素PctVが3-デヒドロシキミ酸を3-アミノ安息香酸へと変換する機能を有することを明らかにしている。本反応は、1つの酵素によって一度のアミノ基転移反応と二度の脱水反応が触媒されるため、その多段階反応機構に興味を持ち、研究を行った。まず、活性部位に存在する種々の極性残基に対する点変異体を作製して酵素活性を調べた。その結果、PLP依存型酵素に広く保存されているリシン残基に変異を導入した場合にのみ3-アミノ安息香酸の生成が見られなくなることがわかった。また、このリシンをアルギニンへと変異させた変異体の反応溶液中には赤紫色の化合物が蓄積することがわかった。そこで、この変異体酵素を用いて結晶化を試みた結果、活性部位にキノノイド体が結合した結晶構造が得られた。このキノノイド体は3-デヒドロシキミ酸とピリドキサミン5’-リン酸とが結合したものであり、野生型酵素の反応液中にも一時的に現れる反応中間体であることがわった。また、変異体の結晶構造により、PctVの3-デヒドロシキミ酸認識機構も明らかにすることができた。以上の結果に基づき、PctVの酵素反応機構を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、放線菌Streptomyces pactumが生産する抗腫瘍抗生物質であるパクタマイシンの炭素五員環骨格の形成機構の解明を目的として行っている。この目的の達成のためには、炭素五員環形成に関わる酵素とその基質を特定する必要がある。平成26年度の研究においては、炭素五員環形成酵素と想定する酵素と、炭素五員環形成前に働くと想定するいくつかの酵素を安定に発現させて精製する条件を見つけることができた。これにより、in vitroでの酵素反応の検討が可能となったため、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、炭素環形成酵素の候補酵素と炭素環形成前に働くと考えられるいくつかの酵素を大腸菌にて発現させ、精製酵素として得ている。そこで今後は炭素環形成前に働くと考えられる酵素の機能解析を進めて炭素環形成酵素の基質を絞り込むと共に、候補として挙げられる基質を用いて炭素環形成酵素と想定する酵素の反応を検討する。 また、炭素環形成酵素の基質特異性が高いことも考えられるため、候補基質である化合物がパクタマイシンの生合成中間体であるかどうかを調べる。具体的には、糖転移酵素遺伝子破壊株に対して候補基質であるグリコシドを投与し、パクタマイシンの生産能が回復するかを見る。炭素環形成酵素とその基質を明らかにした後は、速度論解析や点変異体酵素の反応解析等により、酵素反応機構を明らかにする。
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Research Products
(1 results)