2014 Fiscal Year Annual Research Report
第二次大戦後の国際秩序・米外交政策・テロリズム研究の相互作用に関する社会学的研究
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14J09782
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河村 賢 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | テロリズム / 政策科学 / 対テロ戦争 / 科学社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によって、クリントン政権期に国家安全保障会議に参加したメンバーによって唱えられた「新しいテロリズム」論において(1)宗教的動機によって行動するテロリストの非合理性・予測不可能性(2)そうしたテロリストによる大量破壊兵器使用可能性の高まりといった論点が既に指摘されていたことを明らかにしてきた。今年度の研究においては、そうした新しいテロリズム論が描いてきたテロリスト像が、9.11テロ以後に従来AEIに所属するテロリズム研究者たちによって唱えられてきた「国家支援テロリズム」論と合流し、テロリストとならず者国家の結び付きこそがアメリカにとって重大な脅威と認定されていった過程を解明することを試みた。 このような9.11テロ前後におけるブッシュ政権の対テロ政策の転換はいかなる論理のもので生じたのか。本研究はジョージワシントン大学のナショナル・セキュリティ・アーカイブが公開しているデータベースであるDigital National Security Archiveに所蔵されている政策文書を読み解くことで、AEIに所属していたメンバーが数多く参加したブッシュ政権の発足直後には、新しいテロリズム論によるネットワーク組織の脅威の強調を単に誇張されたものだと受け取っていたこと、にもかかわらず9.11テロ事件が生じたことでブッシュ政権においても急速に新しいテロリズム論の知見の受容が進み『国家安全保障戦略』でネットワーク組織の脅威が語られるようになったこと、同時にテロを支援し匿う国家こそが問題なのだという問題設定は温存されたことを明らかにした。「テロリストとならず者国家が結びつく危険性に対しては先制的に戦争を仕掛けることも許容される」という『国家安全保障戦略』(2002)の「対テロ戦争」政策は、以上のような過程の結果として定式化されたのだった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究の進展によって明らかになったのは、本研究全体にとっての結論に近いところにあたる「ブッシュ政権の対テロ戦争政策はいかにして成立したのか」という問題である。情報公開が未だ十分に進んでいないため、資料の収集には困難も伴ったが、National Security Archiveのアーキビストの協力もあって、この課題には一定の答えを与えることに成功した。来年度以降は対テロ戦争政策を支えた考えの由来をさらに時代を遡行する予定だが、情報公開は比較的進んでいる時期にあたるため、より順調な研究の進展が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在本研究が直面しているのは、1990年代にAEI所属のテロ研究者たちによって唱えられた「国家支援テロリズム論」の起源はそもそもどこなのかという問題である。本研究はこの起源を1970年代半ばにデタント批判の流れを作り出した「現在の危機に関する委員会(CPD)」及びその議長を務めたリチャード・パイプスの活動にあると考え、2015年3月にCPDとパイプスの資料についてワシントンD.C.のナショナル・セキュリティ・アーカイブ及びメリーランドのナショナル・アーカイブ新館に赴き、資料収集を行っている。この資料を分析した研究成果を早期に発表することを目指している。
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Research Products
(2 results)