2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J09883
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
前田 知己 福井県立大学, 生物資源学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 魚類 / 二次リンパ組織 / 獲得免疫 / 分子生物学 / リンホトキシン / トラフグ / 比較免疫 / 水産学 |
Outline of Annual Research Achievements |
二次リンパ組織は免疫応答が起こる場であり、ワクチンの作用基盤である獲得免疫応答の根幹といえる。魚類と哺乳類ではその部位や内部構造は異なる。しかし、免疫応答の根幹であるにもかかわらず、魚類ではその形成に関与する分子機構は長らくブラックボックスのままであり、哺乳類との違いをもたらす原因もわかっていない。本研究は、哺乳類の二次リンパ組織形成に最も重要な分子であるリンホトキシン(LT)とその受容体(LTβR)に魚類と哺乳類で違いがあることに注目し、魚類LTとLTβRの発現や機能を調べることで魚類の免疫応答の場を形成するメカニズムを探る。 哺乳類LTは、分泌型のLTαと膜型のLTβの2種類が存在し、後者がケモカインの産生とそれに続く二次リンパ組織の形成に中心的な役割を果たしている。魚類のLTと考えられている分子は1種類のみ報告されており、どちらのタイプであるかは議論が続いている。まず、魚類LT遺伝子を発現する細胞種の同定を行った。その結果、哺乳類同様、魚類のLTは主にリンパ球で発現することが示された。そこで、魚類LTの発現様式を明らかにするために、リコンビナントを用いた発現様式の解析を行った。その結果、魚類のLTは哺乳類のLTβと同じ膜型の発現様式をとることが示された。さらに、魚類白血球における発現様式を確認するために魚類LTに対する抗血清を作製した。27年度は、本抗血清を用いてトラフグ白血球に発現するLTの発現様式を同定する。 最後に、魚類LT受容体の同定を行った。受容体候補のリコンビナントを作製し、結合実験を行った。その結果、魚類LTとLTβRは結合しなかった。それゆえ、魚類LTには、哺乳類とは異なる魚類独自の受容体が存在する可能性が示された。これらの結果から、魚類は哺乳類と異なる独自のシステムで二次リンパ組織の形成を制御している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要で示した通り、26年度はLT受容体の同定を除き、当初の計画通り研究が遂行できた。想定外の事態が起こった受容体の同定に関しても、新規受容体候補を探索しクローニングを行うなど実験が着実に進むように努力している。それゆえ、現在までの達成度は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、これまでの研究計画の予定通り、本年度作製した抗血清でトラフグ白血球に発現するLTタンパク質の発現様式を同定する。予定通り進まなかった受容体の同定に関しては、本年度の研究で新しい受容体候補を発見し遺伝子クローニングしているので、リコンビナントを作製して結合実験を行う予定である。受容体が同定できれば、その受容体を発現している細胞を分取し、リコンビナントLTで刺激後にケモカインの発現が増加するのかを調べる。 これらの実験の結果をまとめ、LTとLTβRを介した魚類の二次リンパ組織形成の分子機構について考察する。また、これらの遺伝子群に魚類と哺乳類でどのような違いがあるのか、またそれらの違いが、魚類と哺乳類の二次リンパ組織の違いにどのように関与しているのかを考察する。
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Research Products
(3 results)