2014 Fiscal Year Annual Research Report
クロスドメイン構造プライミングによる、言語と数学の木構造の相互作用:fMRI研究
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14J09945
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中井 智也 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | MRI / 数学 / 言語 / 木構造 / プライミング / 学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
数列課題を用いたMRI研究についての論文を執筆・投稿し、2014年9月にPLOS ONE誌に受理された。この研究は、数列の木構造計算を言語と同様に左下前頭回が担っていることを示唆するものであった。続いて、代数方程式を用いたMRI研究について、さらに14名の被験者について追加実験を行い、それ以前に得ていた16人のデータと合わせて解析した。この結果は、2014年8月のThe 6th Annual Meeting of the Society for the Neurobiology of Language 2014において、また、同9月の第37回日本神経科学大会において発表を行った。この研究では、抽象的な代数方程式を用いた課題を用いたが、上述の数列を用いた研究と整合的な結果が得られ、やはり左下前頭回が木構造計算に重要な役割をはたしていることが明らかになった。 言語と数学には木構造計算以外の要素も重要な役割をはたしていることが考えられるが、それらの機能の中でも、学習の効果および課題達成に伴う動機づけに注目し、新たな実験系を作成した。この実験では、被験者に数字や文字を組み合わせた洞察問題解決を行わせた。さらに、問題提示直前に数種類のヒントを提示することで、問題の難易度を操作した。予備実験として5名、本実験として26名の被験者に対し、MRIによる実験を行った。 さらに、言語と数学の木構造の相互作用によるプライミング効果を調べるため、左枝分かれおよび右枝分かれ構造を持つ数式および文の課題セットを考案した。被験者に意味判断課題を行わせることにしたため、数式として正解式および不正解式を、左右枝分かれ構造それぞれについて24例ずつ、合計96種類用意した。また、文としても正文と逸脱文を、同様に合計96種類用意した。これらの数式および文について視覚刺激を作成し、刺激提示用のプログラムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、数学の統語処理(木構造計算)に関わる脳の部位を、具体的な数列課題や、より抽象的な代数課題を行うことにより、左下前頭回という部位に特定することができた。これらの研究では数学の課題のみを用いているが、言語の統語処理に関する先行研究と照らし合わせた上で、今後言語と数学に共通した木構造計算をしている部位の候補を絞り込むことに役立つであろう。 また、新たに考案した洞察問題解決に関するMRI実験では、数字と言語刺激の両方を用いたことにより、木構造処理以外の共通成分として、学習の効果や動機づけの効果を調べることを可能にした。この実験を言語と数学の木構造計算実験と並行して行うことにより、数学と言語に共通する成分を、多くの異なる側面から検証することができると思われる。 さらに、プライミング効果を調べるための課題セット、視覚刺激およびプログラムを作成することに成功したことにより、今後の行動実験およびMRI実験を実施するための準備が十分に整ったといえる。以上を踏まえて、当初の予定に対して若干の変更点はあったが、おおむね想定通りに研究が進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、洞察問題解決課題の行動データおよびMRIデータを詳細に解析する予定である。特に、質問紙や反応時間等の行動指標との関連性や、機能的・解剖学的結合の様態を明らかにしていく。それらの結果をもとに、言語と数学に共通する学習や動機づけの効果を検証する。 さらに、すでに作成した視覚刺激および刺激提示用プログラムを用いて、MRI装置外でPCを用いた行動実験を行う予定である。この行動実験では、被験者20人に対し数式と文刺激のセットをPC画面上に提示し、反応時間と正解率を計測する。この実験は、単にプライミング効果の有無を確認するだけではなく、数式と文刺激の提示間隔を複数条件用意し、最もプライミング効果の大きい実験条件を探ることも目的としている。続いて、この行動実験で明らかにした最適な提示間隔を利用して、25人の被験者に対しfMRIによる実験を行う予定である。fMRI実験では、言語や数式課題に対して全般的に活動する領域を同定するためのfunctional localizerを2セッション、さらに数式と文の相互作用を調べるための撮像を6セッション行い、さらに詳細な解剖画像を得るためのT1強調画像、T2強調画像および、拡散強調画像の撮影を行う。得られたMRIデータを、SPMを用いて解析する予定である。
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Research Products
(3 results)