2014 Fiscal Year Annual Research Report
大規模かつ複雑なタスクを実行可能なクラウドソーシングの実現
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14J09946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梶野 洸 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | クラウドソーシング / プライバシ保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では複雑なタスクをクラウドソーシング(以下CS)で処理する技術の確立を目指しているが、具体的なタスクを考えてみるとプライバシ問題が生じうることが判明し、それにより複雑なタスクをCSで依頼・処理しにくい状況にあることが新たにわかった。そのため複雑なタスクを処理する基盤を構成する技術としてCSでのプライバシ問題の解決に取り組んだ。 本年度はこのテーマで主に2つの研究を行った。ひとつは仕事依頼時に生じるプライバシ問題である。仕事の依頼時には、依頼者は作業者に対して処理対象物(音声書き起こしの仕事の場合は音声ファイル)をわたす必要があるが、処理対象物には秘密情報(会議録音の場合は社外秘の情報など)が含まれている場合があり、作業者経由で秘密情報が漏洩する危険がある。複雑なタスクは特にこのような問題が生じる危険性が高いため、このプライバシ問題解決に取り組んだ。この問題を解決する手法として、必要に応じて漏洩する情報量をコントロールする手法を提案し、その効果を実際のCSで確かめた。 もうひとつは仕事の成果物から生じるプライバシ問題である。例えばトイレやレストランなどがある地点の位置情報を収集する仕事では作業者は依頼者へ位置情報を渡す必要があるが、その位置情報から作業者の行動範囲が漏洩する危険がある。このように仕事の成果物から作業者の属性情報が漏洩し、さらにその情報を用いることで匿名であった作業者の個人が特定される危険がある。この問題を解決する手法として、秘密計算を用いて複数の成果物を合成して個人とは結びつかない成果物を依頼者へ返す手法を提案し、その安全性を理論的に保証した。 これら2つのプライバシ問題を解決することで、プライバシ問題が原因でCSを用いることができなかった依頼者・作業者がCSを利用できるようになり、大規模なCSシステムを構築する土台ができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
一貫してクラウドソーシング・ヒューマンコンピュテーション分野におけるプライバシーの問題の解決に数理工学的な観点から取り組み、トップクラスのジャーナル誌あるいは国際会議において論文発表を行うなどの顕著な業績を挙げた。その取組のオリジナリティは国内外において高く評価され、人工知能学会やマイクロソフトリサーチからの受賞に至った。そのパフォーマンスは期待を大きく超えるものであると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行ったプライバシ保護の研究の視点から見ると、本研究課題で中心となるクラウドソーシングでの仕事割り当てにおいてもプライバシ問題が生じうることがわかる。仕事割り当てに際しては、例えば仕事の処理に必要な能力、作業者の位置情報、希望賃金や希望勤労時間帯などの作業者の情報や、それに対応する仕事の情報を公開する必要があり、このような情報から作業者・依頼者の個人が特定されたり、能力の高い作業者が優遇されるなどクラウドソーシングでの中立性が侵害される可能性がある。 次年度はまずこの問題に取り組み、それを元に複雑なタスクを大規模に処理可能なクラウドソーシングシステムの構築を目指す。
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[Presentation] 能動学習による多関係データセットの構築2014
Author(s)
梶野洸, 岸本章宏, Adi Botea, Elizabeth Daly, Spyros Kotoulas
Organizer
第17回情報論的学習理論ワークショップ
Place of Presentation
名古屋大学(愛知県・名古屋市)
Year and Date
2014-11-16 – 2014-11-19
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