2014 Fiscal Year Annual Research Report
単一神経細胞の光遺伝学的手法による線虫の摂食運動制御機構の解析
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14J10000
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 めぐみ 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | オプトジェネティクス / 行動解析 / 摂食運動 / 線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
摂食運動は全ての動物に共通する生存に必須の運動であり、生体内・外の環境に依存して複雑に調整されている。しかし、複雑な神経系を持つ動物を用いた研究では、各神経細胞が情報処理・運動制御に果たす役割を解析することは難しく、摂食運動の制御機構は未だ解明されていない部分が多い。線虫の神経系はわずか302個の同定可能な神経細胞から成っており、個々の神経細胞の接続が記述されていることから、摂食運動を制御するメカニズムを個々の神経細胞のレベルから明らかにできると期待される。本研究では、線虫の摂食運動の指標として咽頭のポンピングに注目し、摂食運動制御機構の解明を目指す。 今年度はまず、ポンピングを記録するための顕微鏡システムのセットアップを行った。自由に動き回ることのできる状態の線虫のポンピングを撮影するための最適な条件を決定し、記録した動画を解析することによって、ポンピングの定量的データを示すことができるようになった。 ポンピングを制御する神経回路について手がかりを得るため、神経細胞種特異的プロモーターを利用して光作動性プロトンポンプを咽頭内神経に発現させ、特定の神経細胞の活動の抑制がポンピング頻度に与える影響について評価した。この結果、咽頭内14種の神経細胞のうち複数種の活動操作によりポンピングの頻度が変化することを明らかにした。本研究の光遺伝学的操作により、これまでに行われてきた神経細胞破壊の実験からポンピング頻度の調節にほとんど寄与することがないと示唆されていた神経細胞が、ポンピング頻度の制御に何らかの役割を持つことが新たに明らかになった。 咽頭内神経の抑制だけでなく、活性化がポンピング頻度に与える影響も評価する予定である。神経細胞の光依存的活性化のための長期開口型チャネルロドプシン[ChR2(C128S)]を神経細胞種特異的に発現するトランスジェニック線虫の作製はすでに完了している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポンピングの頻度を定量化する系を立ち上げることができた点、また、神経細胞種特異的プロモーターを利用して光作動性プロトンポンプ(Arch)を咽頭内神経に発現誘導した線虫のポンピングを解析することで、特定の神経細胞の活動の抑制がポンピング頻度に与える影響について評価することができた点は予定通り進展していると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
神経細胞種特異的プロモーターを用いた発現誘導により、ポンピングの制御に関わる咽頭内神経の候補を挙げることができた。しかし、これらプロモーターを用いた発現誘導では、咽頭外の神経細胞・非神経細胞にも光作動性プロトンポンプの発現が誘導されている場合があり、これら目的の細胞以外の細胞のポンピング制御への寄与を否定することが難しい。この問題点を解決するために、遺伝子発現用赤外レーザー照射顕微鏡(IR-LEGO: Infra-Red Laser Evoked Gene Operator)を用いて単一神経細胞での遺伝子の発現を誘導し、ポンピング制御に決定的な役割を果たす神経細胞を突き止めたいと考えている。 また、これらの神経細胞の活動が、自然条件においてもポンピング頻度を制御しているのか検証が必要である。そのために、カルシウムイメージングシステムを立ち上げ、ポンピング頻度の変化と神経細胞の活動の変化を対応付けて明らかにする計画である。カルシウムイメージングのためには、顕微鏡下で神経細胞を継続してモニターするプレパレーションが必須であることから、まずはポンピングを止めることなく頭部を固定する方法を検討している。
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