2014 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答DNAと脂質膜小胞の融合による動的な細胞型分子ロボットの設計と構築
Project/Area Number |
14J10002
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
森田 雅宗 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞サイズリポソーム / DNAコンピューティング / 分子ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は,遠心型マイクロ流体デバイスによる分子ロボットのボディとなる均一サイズを有した細胞サイズの脂質二重膜小胞(リポソーム)の作製法の開発に成功した.具体的には,高重力下において液体が封入された微細ガラス管からの微小液滴生成が可能な遠心型マイクロ流体デバイスを用いた.デバイス内部には脂質が溶けた油層と水層が油水界面を形成している.遠心力により,ガラス管の先端からサイズの異なる2種類の油中水滴が形成される,このとき小さい油中水滴ほど通過しやすいという物理的特性を利用することで,直径10-20 μmの均一サイズのリポソームを作製することが出来た.この得られたリポソームに,膜たんぱく質の挿入,膜表面上でのドメイン形成,脂質二重膜の外層と内層の非対称構造,リポソーム内部でのタンパク質発現系を封入することに成功した.今後,この技術を応用して,細胞膜の様な高次の機能を有した新たな人工細胞型分子ロボットの構築が期待できる. また,環境応答型分子ロボットの構築の為のDNA分子コンピューティング反応の開発に成功した.具体的には,UV光照射によりDNAの構造変化を誘起し,RNA転写システムを利用することでDNA入力からRNAを出力するシステムの開発に成功した.今後,光だけでなく,小分子(ATPなど)を認識するDNAアプタマーの使用へと拡張することで,環境応答が可能な分子ロボットの構築を目指す.また,当初の目的であった脂質膜上のドメイン形成制御機構の構築について,現在,DNAが脂質膜に吸着,ドメインを誘起する膜ダイナミクスを引き起こすことを確認しており,今後さらなる検討が必要だが,外部からの刺激に応答して,同様に膜面上でのドメイン構造形成制御システムの構築を目指す基礎が確立された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は,(1)マイクロ流体デバイスによる分子ロボットのボディの構築,(2)環境情報に応答してリポソーム膜上でのドメイン形成を制御するという2つの実験を計画していた. 当初の研究計画に対して,(1)では計画通り,細胞サイズの均一なリポソームの作製法を構築することが出来た.さらに,生体システムの高次機能を模倣したリポソームの作製にも成功し,企業との共同研究など本研究以外へ波及した期待以上の成果を見出すことが出来た.(2)については,計画達成までは至っていないが,外部刺激に応答して入力と出力が異なるシステムの開発に成功し,分子ロボットのボディとなるリポソーム内部へ封入することが出来る段階まで研究が進んでいる.さらに当初の目的であるDNAによる膜上のドメイン制御機構の開発に向けてデータが出始めてきている. 以上より,最終目的を達成するための研究進捗は順調であると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,本年度は,昨年度から引き続きDNAによる膜上のドメイン制御システムを完成させる.昨年度に構築した基礎技術を統合することで,これを達成させる.さらに,作成したリポソームの膜非対称構造を利用して,膜の内部と外部とで異なる分子センサーを配置する.これにより,異なる外部刺激をトリガーとした反応を実装したリポソームを作製し,膜のドメイン形成ダイナミクスや膜の変形ダイナミクスを誘起する系へと発展させる. 以上から,本研究課題である外部情報を自律的にセンスすることで,膜の変形などの機能を自発的に生み出す人工細胞型分子ロボットの構築を目指す.
|
Research Products
(9 results)