2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
14J10046
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Research Institution | National Institute for Japanese Language and Linguistics |
Principal Investigator |
青井 隼人 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変異研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 宮古語 / 音韻構造 / 舌端母音 / 成節子音 / 三型アクセント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は理論的に興味深い特徴を複数持つ宮古語の音韻構造に焦点を当て、その独自性を明らかにすることを目的とする。従来の宮古語研究は、個別方言の共時態を記述する研究か複数の方言の比較をベースにした歴史的研究が主であり、宮古語音韻論の理論的・類型論的な問題の指摘および考察はほとんどなされてこなかった。本研究では、(1) 構造的関係性(音韻論と他領域との関係)、(2) 歴史的関係性(共時的パタンと歴史的パタンとの関係)、(3) 系統的関係性(宮古語諸方言間の関係)という3つの関係に注目しながら、宮古語諸方言の共時的な音韻構造を記述し、その過程で浮かび上がる理論的・類型論的な問題を考察する。 本年度は2回の研究発表と1回の現地調査をおこなった。研究発表の1件目は多良間方言の三型アクセント体系に関する報告である。多良間方言が三型アクセント体系をもつ方言であることは比較的近年になって発見されたことであり、その体系についてはまだ未解明な点が多く残されている。本発表では、現時点までの研究成果をレビューした上で、同方言のアクセントの諸特徴を整理し、記述上の当面の課題を明らかにした。 研究発表の2件目は宮古語の舌端母音の発展メカニズムに関するレビュー発表である。宮古語の舌端母音は舌背だけでなく舌端でも口蓋との狭めをつくる点で通言語的に珍しい特徴を持った母音である。そのような特徴を持った母音がどのようなメカニズムによってどのようなプロセスで発展してきたのかは理論的・類型論的に重要な問いである。本発表では、まず多良間方言における舌端母音の特徴を整理し、その上で従来の研究が舌端母音の発展メカニズムをどのように説明しているかを批判的にレビューした。 調査は2016年3月に3日間おこなった。2名の話者のご協力によりアクセントと形態音韻論に関する多良間方言の重要な資料を収集することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本プロジェクトの基礎となるべき博士論文(題目「宮古語多良間方言の音声学的・音韻論的構造の諸相」)の執筆が、当初の計画よりもかなり遅れている。 しかし、昨年度は、本プロジェクトに関連する口頭発表を2件と多良間島(宮古群島の1つ)での現地調査をおこなうことができ、決して大きくはないが、進展も見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは本年度の早い段階で博士論文を完成させる。博士論文の執筆終了と同時に、各章の内容を独立した論文として投稿する改訂作業を開始する。投稿先としては、『音声研究』(日本音声学会)、『言語研究』(日本言語学会)などを検討している。なおこれらの改訂にあたっては、本プロジェクトの成果としてふさわしいものにするべく適切な加筆修正をおこなう。 本年度の後半には宮古群島での現地調査をおこなう。博士論文を執筆する過程で特定した宮古後音韻構造の3つの特徴(舌端母音、成節子音、三型アクセント)について、いくつかの主要な方言を調査し、分析する。調査の結果は年度末までに口頭発表か投稿論文の形で公表したい。
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Research Products
(3 results)