2014 Fiscal Year Annual Research Report
P-スピロ型アミノホスホニウム塩を触媒とする高度分子変換
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14J10069
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉岡 謙 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 有機イオン対 / 超分子イオン対 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で注目したP-スピロ型キラルテトラアミノホスホニウム塩は当研究室で開発された有機分子触媒であり、アミノホスホニウムイオンが持つ水素結合供与能に起因する高い立体制御能を有している。これまでに本研究において、共役塩基であるトリアミノイミノホスホランが、電子不足なジエンあるいはトリエンに対するアズラクトンの共役付加反応における反応位置および立体制御に極めて有効な触媒であることを見出した。またこの過程で、末端がアリール基のジエンを基質とした場合には位置および立体選択性に関して再現性が低いという結果を得ており、この原因が系内に存在する水分子の数と密接に関連していると想定していた。今回、系内の含水量と選択性との相関についてキラルアミノホスホニウム塩の超分子イオン対としての性質と関連付けて詳細な調査を行ったところ、本反応においては含水量に加えて反応温度も選択性に決定的な影響を与えることを見出した。すなわち、比較的温度が高い0 ℃の条件ではアミノホスホニウムイオンと会合する水あるいはフェノールの添加が選択性に与える効果は小さく再現性を得ることも比較的困難であったのに対し、-30 ℃の低温条件下では水あるいはフェノールの添加により位置および立体選択性が大きく向上するとともに良好な再現性を得られることがわかった。この実験結果は、良好な位置および立体選択性の発現に有効な、アミノホスホニウムエノラートが添加剤を取り込んだ会合型遷移状態を安定に形成するためには低温で反応を行う必要があり、高温条件は不利であることを示唆している。また、この低温条件による会合型遷移状態の安定化効果を利用することでジアステレオ選択性の大幅な改善を達成し、最終的に用いるイミノホスホランのアルキル・アリール置換基を使い分けることで2つのジアステレオマーをそれぞれほぼ完全な位置および高い立体選択性で作り分けることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で掲げている高度分子変換を実現するには、キラルアミノホスホニウム塩触媒系における遷移状態の詳細な理解が不可欠である。今年度の研究によって、添加する水分子やフェノールなどが遷移状態の構造に与える影響が反応温度とどのように相関しているかを明らかにしたことで、遷移状態の精密制御に基づくジアステレオダイバージェントな1,6-付加反応の開発に繋がった。本成果は、本研究のコンセプトの妥当性を実証するものとして極めて重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得た本アミノホスホニウム塩触媒系の遷移状態における理解を踏まえて、さらに高度な選択性の制御が必要な反応系の開発に取り組む。
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Research Products
(3 results)