2015 Fiscal Year Annual Research Report
P-スピロ型アミノホスホニウム塩を触媒とする高度分子変換
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14J10069
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉岡 謙 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / 有機イオン対 / 超分子イオン対 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で注目したP-スピロ型キラルテトラアミノホスホニウム塩は当研究室で開発された有機分子触媒であり、アミノホスホニウムイオンが持つ水素結合供与能に起因する高い立体制御能を有している。本研究においてこれまでに、反応点を複数持つ親電子種として電子不足なジエンあるいはトリエンを用いたアズラクトンの共役付加反応において共役塩基であるトリアミノイミノホスホランが、反応位置および立体制御に極めて有効な触媒であることを明らかにしている。また、末端にアリール基が置換したジエンを基質とした場合には、用いるイミノホスホランのアルキル・アリール置換基を適切に選ぶことで可能な8種の異性体のうちから2つのジアステレオマーを独立にかつそれぞれほぼ完全な位置および立体選択性で作り分けることに成功した。今年度は本法の合成化学的価値を示すために、生成物の誘導化を重点的に行った。まず、本反応の生成物が持つ多数の官能基をひとつずつ順番に変換するための手法を確立し、種々の非天然アミノ酸誘導体およびキラル1,2-アミノアルコール部位を含むキラル合成素子の合成につなげた。さらに、生成物が含むオレフィン部位を利用する変換として多置換プロリン誘導体の合成を検討し、DBUを作用させる条件と塩化白金を用いる条件を使い分けることでジアステレオ分岐型環化反応をそれぞれ高選択的に達成した。 並行して、アミノホスホニウム塩を用いるラジカル反応の開発にも取り組み、アミジルラジカルの生成を経て進行する既知の環化反応をモデルに、可視光増感剤に触媒量のキラルイミノホスホランを共存させて反応を行った。その結果、イミノホスホランを添加した場合にのみ反応が進行する基質を発見した。立体化学の制御には至っていないものの、これは今後、選択的ラジカル反応の開発を推し進めていく上で重要な知見になるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で掲げている高度分子変換の価値を示すには、生成物の誘導化によって保護基の除去や各種有用化合物への変換を行うことが不可欠である。今年度の研究で、保護基を除去する方法と各種アミノ酸誘導体への変換を達成したことで、本1,6-付加反応の合成化学的価値を示すことができた。本成果は、本研究の価値を実証するものとして極めて重要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得た本アミノホスホニウム塩触媒系の遷移状態における理解を踏まえて、制御が難しいラジカル化学種の制御を指向した反応開発に取り組む。
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Research Products
(3 results)