2014 Fiscal Year Annual Research Report
疾病治療・予防における柑橘成分ノビレチンのチオレドキシン結合蛋白質発現抑制作用
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14J10146
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
池田 絢香 静岡県立大学, 薬食生命科学総合学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | TXNIP / ノビレチン / 神経芽細胞腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
柑橘果皮成分ノビレチンは、アルツハイマー病をはじめとした種々疾患に対して改善作用を発揮する可能性が報告されており、ノビレチンの疾患治療応用やノビレチン含有機能性食品の開発が注目されている。われわれは、ノビレチンが細胞ストレス増悪因子チオレドキシン結合蛋白質(TXNIP)発現を顕著に抑制する知見をこれまでに得ており、ノビレチンの疾患改善作用発現には、TXNIP発現抑制が密接に関連するものと考えている。本研究では、疾病治療・予防におけるノビレチンのTXNIP発現抑制作用の意義を解明するという目的を達成するにあたって、本年度は以下のような研究を実施した。まず、ヒト神経芽細胞腫SK-N-SH細胞株に転写阻害剤としてアクチノマイシンDを処理した後のRNAを抽出し、TXNIP mRNA発現量について検討を行った。その結果、アクチノマイシンD存在下におけるTXNIP mRNA発現量は溶媒群とノビレチン処理群で有意な変動の相違が認められなかったため、ノビレチンによりTXNIP mRNAの安定性は変動しないことが明らかとなった。続いて、TXNIP遺伝子発現レポータープラスミドをSK-N-SH細胞に一過的に導入した後、ノビレチンを処理し、プロモーター活性をルシフェラーゼアッセイにより測定した。その結果、溶媒群と比較してノビレチン処理群ではTXNIPプロモーター活性の顕著な抑制が認められた。このことから、ノビレチンによるTXNIP発現抑制作用は、少なくとも一部はTXNIP遺伝子のシスエレメントを介した作用によることが明らかとなった。本年度の研究成果は、ノビレチンによるTXNIPの発現抑制に関与しうる転写因子の同定などを可能とし、疾病治療・予防におけるノビレチンのTXNIP発現抑制作用の意義を解明するための基盤になるものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成26年度終了時点までに、まず、TXNIP発現がどのように調節されているのかを明確にした上で、ノビレチンによるTXNIP発現抑制メカニズムを解明していくことを計画した。これに関しては、転写阻害剤アクチノマイシンDを用いたTXNIP mRNAの安定性の検討、および、TXNIP遺伝子のプロモーター領域を組み込んだベクターを用いたレポーターアッセイの検討により、ノビレチンによるTXNIP発現抑制作用は、少なくとも一部はTXNIP遺伝子のシスエレメントを介した作用であることが明らかとなり、次年度の研究に引き続く基盤となる結果を得た。続いて、ノビレチンによりTXNIP発現抑制が見られた細胞ストレス条件(小胞体ストレス、酸化ストレス、高グルコース状態など)において、細胞傷害(アポトーシス等の細胞死を含む)が抑制されうるかどうかについて検討を行い、ノビレチンの有益作用とTXNIP発現抑制の因果関係を明らかにする予定であった。具体的には、TXNIPの発現亢進により引き起こることが知られているNLRP3インフラマソームを介したCaspase-1活性化とIL-1β産生がノビレチンにより実際に抑制され、TXNIPの下流シグナルがノビレチンにより変化することが細胞保護効果に寄与しているかについて明確にすることを計画していた。しかしながら、ノビレチンのTXNIP発現抑制作用と上記のシグナル伝達系の抑制の関係性について明確な結論を出すに至る十分な結果を得ることが出来なかった。この点に関しては、現在、追加検討中であり、次年度には明らかにする予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度までの研究結果より、ノビレチンによるTXNIP発現抑制作用には、少なくともTXNIP遺伝子のシスエレメントに関与する転写調節因子が密接に関与していると推察された。そこで本年度は、疾病治療・予防におけるノビレチンのTXNIP発現抑制作用の意義を解明するという目的を達成するにあたって、まず、ノビレチンによるTXNIP発現抑制作用に関与しうる転写因子の同定を行う。具体的には、TXNIP遺伝子プロモーター領域を順次欠失させdeletion assayを行い、ノビレチンのTXNIP発現抑制作用に寄与する転写因子について予測を立てる。続いて、それら因子に対するRNA干渉を行い、ノビレチンのTXNIP発現抑制作用がどのように変化するかを検討する。また、推測された転写因子に応答するレポータープラスミド、および、その応答配列の一部を変異させたレポータープラスミドを用いて、予測された転写因子とノビレチンの作用の関連性について明らかにする。さらに、クロマチン免疫沈降法により実際に推測された転写因子がTXNIP遺伝子プロモーターに結合しノビレチンによる発現調節に関与していることを証明する。これらから得られた結果を基にして、ノビレチンのTXNIP発現抑制作用点を明らかにしていく。加えて、平成26年度までに検討を行ったTXNIP発現の亢進が認められる細胞ストレス条件において、ノビレチンにより細胞障害(アポトーシス等の細胞死を含む)が抑制されうるかどうかについて検討を行い、ノビレチンの疾患改善作用とTXNIP発現抑制作用との因果関係を明らかにする。
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Research Products
(2 results)