2014 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックインシュレーション技術を適用した開口部の実用化に関する研究
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14J10194
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河原 大輔 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 断熱性能 / 省エネ / 温熱環境 / 快適性 / 結露 / 防露性能 / ダイナミックインシュレーション / 窓 |
Outline of Annual Research Achievements |
本技術は1970年頃よりイギリスや北欧などの寒冷地の省エネ技術として知られてきた、ダイナミックインシュレーション技術を建築部位に適用した際の性能検証を行い、これまでに断熱性能の検証を行ってきた。ダイナミックインシュレーション技術とは、住宅の室内外差圧を駆動力として、熱損失と逆方向の移流を発生させ、熱損失の一部を回収するという技術である。本年度の研究では、住宅建材の中で最も断熱性能が悪い窓部にこの技術を適用させ、その性能を検証した。 検討した性能は、断熱性能、防露性能、快適性である。断熱性能の検討内容は、室内外温度を制御することの出来る試験室による実験と、実際の住宅に取り付けた実在住宅実験を行った。ダイナミックインシュレーション窓の断熱性能は通気量に依存する。このため、その関係性をJISに基づく熱箱試験法により検証し、また実際の住宅にダイナミックインシュレーション技術を適用した窓を取り付け実際に利用した時の断熱性能の評価を行った。防露性能の検討内容は、各地域ごとの湿害リスク評価を行った。結露を評価するために必要な任意の部位の絶対湿度と温度は、通気をしていれば熱抵抗値や透湿抵抗値から算出することは難しいため、実験に基づく無次元指標を用いた指標を提案した。この無次元指標は、室内外の温湿度差を分母に、任意点と湿害の温湿度差を分子に持ち、同様の形状で同様の通気量の際に有効な指標である。防露性能の検討ではこの指標を用いて、日本各地の異なる気候の湿害リスクを評価し、ダイナミックインシュレーション窓の適用可能地域や運用方法の検証した。快適性の検討は、人体のように発熱し表面温度の制御をするサーマルマネキンを用いた実験を行った。実在住宅にこのマネキンを配置して、外気導入による室内の冷却効果を等価温度という指標で評価した。 これら検討により、一般的な窓と比べて高い優位性を証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本技術を適用した窓のプロトタイプを用いた実験により、窓を通気する給気量が断熱性能へ与える影響をまとめた。断熱性能、すなわち熱貫流率、は通気を行えば行うほど良いというわけではなく、ある程度の流量からは定数となる。この理由は熱貫流率の計算に通気の効果が及ばないサッシ部分やフレーム部分の熱伝導が挙げられる。しかしながら、一般的なリビングの必要換気量程度で0.8W/m2K程度となることから通気の効果による断熱性能の向上は大きい。 CFDを用いた窓の給気量変化が室内の温度場・流れ場に与える影響を検証した。本技術は外気を導入するため、室内の温度場・流れ場に影響を与えないと断言できない。このため、CFDと実験による窓の給気量変化が室内の温度場・流れ場に影響を与える度合いをCRIをいう指標を用いて検証を行った。日中の熱取得を促す方向に窓は機能し、日中であれば室内よりも高い温度で室内に導入されることが実験から分かった。この結果をCFDの境界条件として室内の温度場・流れ場を検証したところ、夜間の窓近辺において下降流が発生することが確認できた。 寒冷地に本技術を適用した住宅に人間の様な表面温度制御をするサーマルマネキンにより温熱快適性を検証した。前述の温度場・流れ場に与える影響により、室内にいる人間の快適性にどの程度影響をあたえるのかを検証した。この結果、リビングを利用する日中において、室内外温度差の数%程度の温度低下を感じ、一般換気口と比べればより快適である結果が得られた。 外気導入の際に問題となる内窓の室内側表面の冷却による湿害リスクの評価を検証した。無次元指標を用いて、日本の気候の異なる各地域における湿害リスクを評価した。日本海側の降雨量の多い地域や中部日本の冷涼な地域において湿害リスク、すなわち結露発生リスクやカビの発生リスク、が高い傾向が得られ、これらの地域への適用は注意が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後検討予定の方策について下記に示す。 ダイナミックインシュレーション窓の断熱性能は通気量に依存することが熱箱試験により把握できた。この通気量はファンのPQ特性と住宅の隙間性状、外部風速、風圧係数により決まるので、これら情報ををネットワークシミュレーションに組み込んで、外乱を考慮した暖房負荷を検証する。この検証を通じて適用地域別の省エネ効果は大きく変化することが予想できる。効果的な省エネ効果を得るダイナミックインシュレーション窓の適用可能地域を検証することで、我が国の民生部門のエネルギー消費に貢献できると考える。 ダイナミックインシュレーション窓の快適性の評価を行ってきた。この検証はある限定的な条件下のものである。このため、温度寄与率CRIの考えられる環境下の値を算出することは必要である。具体的な事例として、日中と人の滞在場所を変数としてを考える。場合によっては室内外の差圧を調節することにより表面温度を変化させる空調制御システムも必要になることが予想されるので、この課題も検討を行う。 ダイナミックインシュレーション技術を壁に適用した検討を行う予定である。窓と異なり断熱性能が高いが、その面積が大きいため断熱性能が向上することでさらなる省エネルギー効果を得ることができると考える。
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Research Products
(7 results)