2014 Fiscal Year Annual Research Report
後続フェーズを利用した3次元速度構造解析に基づく巨大地震震源域形成要因の解明
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14J10221
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
悪原 岳 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2016-03-31
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Keywords | 沈み込み帯 / レシーバ関数解析 / 海底地震計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、紀伊半島沖に位置する東南海・南海地震間の震源域境界の成因を解明することを目的としている。そのために、海底地震計と陸上地震計のデータを用いて、3次元地下構造の推定に取り組む。とりわけ、プレート境界面の形状、および境界面付近の流体分布は、巨大地震の断層すべりに強く影響を与えると考えられるため、詳しく調査する必要がある。本年度の研究では、沈み込むプレート内の地震波速度不連続面(プレート境界面や海洋性モホ面)に由来するPS変換波(速度不連続面に入射するP波がS波に変換されたもの)を同定し、その到達時刻と振幅から、沈み込むプレートの形状と流体分布を推定することを試みた。PS変換波の振幅は地震波速度のコントラストに依存するため、流体の指標とすることができる。 PS変換波はたいてい、P波の長い継続部分と重なってしまい、振幅を直接計測することができない。そのため、通常は震源関数の影響を除去した波形(レシーバ関数)を計算し、PS変換波を可視化する方法がとられる。しかし、海底地震計のデータでは、海面で反射する波がノイズとして混入してしまうために、従来の手法ではレシーバ関数を計算することが難しかった。本研究では、海面反射波を取り除く線形フィルターを適切に設計・適用することで、海底地震計のデータを用いてもレシーバ関数を正しく計算できるようになることを確認した。 このようにして計算されたレシーバ関数から、フィリピン海プレート上面に由来するPS変換波を同定し、振幅のマッピングを行った。その結果、海溝軸に沿ってPS変換波の振幅が大きく変化している様子や、プレート境界面で起こる様々な地震(低周波微動やスロースリップなど)との対応関係を確認することができた。今後はプレート上面の傾きなども考慮に入れつつ、PS変換波の振幅から間隙流体圧を定量的に推定し、巨大地震時の断層すべりに及ぼす影響について考察を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を行うに当たって予想されていた困難は、ノイズレベルが高い海底地震計のデータ上でPS変換波などのシグナルを同定できるのかという部分にあった。平成26年度の研究では、ノイズを効率よく除去し、シグナルを抽出する手法を確立することができ、目的達成への展望が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究では、手法の開発により、PS変換波の振幅をマッピングできるようになった。平成27年度は、PS変換波の振幅や地震波速度構造から、間隙流体圧などの物理量を定量的に評価することで、巨大地震震源域境界の生成要因について考察することを目指す。
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