2014 Fiscal Year Annual Research Report
加齢に伴う老化細胞に対する免疫応答システムの変化とその意義の解明
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14J10280
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
大熊 敦史 公益財団法人がん研究会, がん研究所がん生物部, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2014-04-25 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 個体老化 / CDKインヒビター |
Outline of Annual Research Achievements |
In vitroにおいて研究が進められてきた細胞老化は、in vivoにおいても細胞老化を起こした細胞(老化細胞)が加齢に伴い蓄積していることが明らかにされ、老化細胞の蓄積が加齢性疾患の原因の一つではないかと考えられるようになってきている。また、発がんストレスにより細胞老化が引き起こされた場合、老化細胞に対する免疫応答の存在を示唆する研究が報告されてきている。本研究課題では、①老齢の個体において老化細胞が除去されることが加齢やそれに伴う疾患に影響を及ぼすのか、②免疫細胞はどのように老化細胞を認識・除去しているのか、③なぜ加齢に伴い免疫系の攻撃を回避した老化細胞が蓄積するのか、以上3点の解明に取り組んでいる。 ①老齢マウスにおける老化細胞除去の実験系構築のため、前年度に老化細胞の蛍光標識及び薬剤投与による除去を目的とし作製したp16DTR-GFPマウスの解析を行った。しかしながら、マウス個体において加齢に伴うGFP蛍光の増強は見られず、DTRの発現も確認できなかった。 p16DTR-GFPマウスでは当初の実験計画を遂行できないと判断し、計画を変更した。②で作製予定であったin vivoで細胞老化を誘導できるトランスジェニックマウス(Tgマウス)と、①の老化細胞を除去できるマウスを組み合わせたTgマウスを作製することにした。このマウスは細胞老化を誘導するHRASV12またはp16をin vivoで過剰発現できることに加え、p16DTR-GFPと同様にGFPとDTRも同時に発現するように設計し作製した。 p16とp21のin vivo imagingから、腫瘍により誘導されたmyeloid-derived suppressor cell においてp16とp21が発現していることを突き止めた。腫瘍の進展に対し、この細胞種におけるp16/p21の発現が関与していることを示唆するデータも得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老齢マウスにおける老化細胞除去の実験系のために作製したp16DTR-GFPマウスにおいて、蛍光タンパク質のGFPと老化細胞除去のためのdiphtheria toxin receptor (DTR)の発現量はともに著しく低く、このマウスでは目的を果てせないことが判明した。この結果は本研究課題の達成度の観点において大きなマイナスポイントである。 そこで、当初予定していた、マウスの生体内で細胞老化を誘導するトランスジェニックマウス作製において、DTRも同時に発現し人為的に老化細胞を除去できるように変更した。これにより、老齢個体における実験系は不可能であるものの、生体内で老化細胞を誘導・除去できるため、本研究目的の主要な部分は解析可能になった。 また、本研究課題の本流からは外れるが、p16及びp21のin vivo imagingの解析から、腫瘍により誘導され免疫系を抑制することで腫瘍の進展を助けることが知られている細胞種であるmyeloid-derived suppressor cell (MDSC)においてp16とp21が発現していることを突き止めた。腫瘍の進展はMDSCにおけるp16/p21の発現がないと遅くなるケースがあるというデータが得られている。p16やp21はCDKインヒビターとしてのこれまで知られていた「細胞自身ががん化することを抑制する機能」とは反対の方向性である「腫瘍の進展を促進する機能」をも有する可能性を示すもので大変興味深い。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、生体内で細胞老化を誘導・除去できるトランスジェニックマウスは複数ライン得られており、より適切なラインの選定を行っている。平成27年度はこのマウスを使用しi)老化細胞を生体内で誘導すると個体老化の表現型が観察されるか、ii)老化細胞を除去するとその表現型が改善するか、iii)老化細胞が生体内で誘導されると免疫系によって除去されるのか、を中心に解析をすすめる。また、細胞老化誘導においても炎症性サイトカインの放出を伴う変異RAS誘導型と炎症性サイトカインの放出を伴わないp16過剰発現型の2種類のトランスジェニックマウスを作製しており、加齢性疾患様の表現型に対する違いや、それぞれによって誘導された老化細胞に対する免疫応答の違いが見られないか注目している。 MDSCにおけるp16/p21の発現とがんの進展についての関係については、分子機構の解明に取り組む。特に、p16/p21二重欠損マウスでは単球様MDSCの腫瘍部への浸潤が少なく、単球様MDSCにおけるCCR2の発現が低下している。このケモカインレセプターは単球様MDSCにおいて発現しており、腫瘍部への浸潤や腫瘍の進展へ関与していることが報告されている。単球様MDSCにおけるp16/p21によるCCR2の発現制御機構の解明に注力する。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Ablation of the p16(INK4a) tumour suppressor reverses ageing phenotypes of klotho mice.2015
Author(s)
Sato S, Kawamata Y, Takahashi A, Imai Y, Hanyu A, Okuma A, Takasugi M, Yamakoshi K, Sorimachi H, Kanda H, Ishikawa Y, Sone S, Nishioka Y, Ohtani N, Hara E.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 6
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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